欧州委員会は7月31日、仏鉄道車両・設備大手のアルストムがカナダ同業ボンバルディアの鉄道事業を買収する計画を条件付きで承認したと発表した。アルストムは事業資産の一部を売却することを求められる。
両社は2月に同買収で合意していた。買収額は最大62億ユーロ。両社を合わせた売上高は160億ユーロを超え、アルストムは中国中車(CRRC)に次ぐ世界2位の鉄道メーカーに浮上する。2021年上期の買収手続き完了を目指している。
アルストムはCRRCに対抗するため、17年に独シーメンスと鉄道事業を統合することで合意した。しかし、EUから欧州の鉄道車両、信号システム市場での健全な競争が損なわれるとして承認されず、計画を断念した経緯がある。
アルストムは今回の買収でも欧州委が難色を示すことを見越し、仏北東部レッシュショフェンにある同社の工場、ボンバルディアの通勤電車用車両事業の売却や、ボンバルディアが日立製作所と展開する高速鉄道用車両の合弁事業から手を引くことなどを提案。これを欧州委が受け入れ、その実施を条件に承認した。
アルストムは6月中旬に買収認可を申請してから、わずかな期間で欧州委の承認を取り付けた。シーメンスとの事業統合と比べて、事業の重複が少なく、競争上の是正策を講じるのが容易だったことや、欧州委がシーメンスとの統合を阻止した際に独仏政府から批判を浴びたことが背景にあると目される。