米小売り最大手ウォルマートは2日、傘下の英スーパー3位アズダを英国の企業連合に売却することで合意したと発表した。アズダを事業価値ベースで68億ポンドと評価し、保有する株式の大半を売却する。
売却先は、英国でコンビニエンスストアやガソリンスタンドなどを運営するEGグループの創業者で共同経営責任者のイッサ兄弟と、英投資会社TDRキャピタルのコンソーシアム。株式の保有比率は公表されていないが、ウォルマートは少数株主としてアズダとの資本関係を維持し、取締役も1人派遣する。
アズダの新オーナーは今後3年間で10億ポンド以上を投資し、サプライチェーンを強化する計画。英国とEUの通商交渉がまとまらないまま12月末に移行期間が終了した場合、大陸欧州との物流に混乱が生じる恐れがあるため、牛肉や鶏肉、乳製品、小麦粉などを中心に英国産の調達を増やす。また、今後も低価格路線を維持する方針で、特にガソリン販売で「プライスリーダー」としてのポジションを維持したいと強調している。
ウォルマートは1999年に67億ポンドでアズダを買収し、完全子会社とした。しかし、ドイツの格安スーパーのアルディやリドルが英国で存在感を増すなど競争が激化している。ウォルマートは18年、苦戦を強いられているアズダを業界2位のセインズベリーと経営統合させて生き残りを図ろうとしたが、競争・市場庁(CMA)は両社の統合が実現すると寡占化が進み、価格上昇につながる恐れがあるとして計画を阻止。ウォルマートは新興国市場やネット通販に経営資源を集中投下するため、新たな売却先を模索していた。