自動車大手の独フォルクスワーゲン(VW)は9月30日、従来型の自動車メーカーからの脱皮に向けた取り組みを強化する意向を表明した。ヘルベルト・ディース社長は株主総会で、「コロナ禍を理由に改革を遅らせるのではなく、加速する」と明言。「フォルクスワーゲンは価値あるブランド、魅力的な内燃機関車の集合体から、何百万ものモビリティデバイスを安定的に運営するデジタル企業へと転換しなければならない」と構造改革への意欲を示した。車両の電動化も推し進め、環境規制の強化に対応していく。
同社はデジタル化を推進するため、ITと自動運転分野で2024年までに計140億ユーロを投資する計画だ。電気自動車(EV)分野では330億ユーロを投じる。
EUでは二酸化炭素(CO2)排出規制を順守できない自動車メーカーに制裁金を課すルールが来年から導入される。メーカーはEU市場での年販売台数に応じ、排出許容上限(走行1キロメートル当たり95グラム)を1グラム超過するごとに1台当たり95ユーロの制裁金を課させることになっている。許容上限は30年まで段階的に引き下げられていく。
EUのCO2排出規制はさらに強化される見通しで、欧州委員会のフォンデアライエン委員長は9月中旬の一般教書演説で、EU域内の30年の温室効果ガス排出量を1990年比で少なくとも55%削減するとの目標を打ち出した。従来目標の40%から大幅に引き上げるもので、自動車のCO2排出規制強化は避けられない。
ディース社長はこれを念頭に、VWグループはEVの販売を迅速に拡大することでCO2規制の強化に適切に対応できると強調した。11月に発表する見通しの新たな事業計画でEU規制への対応策を打ち出すとの観測が出ている。
コロナ禍で悪化した業績については回復に向かっていることを明らかにした。操短はすでに打ち切っており、EVと部品工場では生産シフトを増やしている。9月の販売台数と受注台数はコロナ危機の発生後、初めて前年同月を上回る見通しだ。今年の業績目標を据え置いており、利益を確保できるとしている。