英政府は27日、米グーグルをはじめとする巨大IT企業を規制する新たな組織を設置すると発表した。ネット広告などを主な収入源とするプラットフォーマーが市場支配力を強めている現状を是正するため、2021年4月に「デジタル市場ユニット(Digital Market Unit=DMU)」と名付けた新組織を競争・市場庁(CMA)内に立ち上げ、「GAFA」など巨大ITに対する監視を強化する。
英政府は「デジタル広告を収入源とするものを含むプラットフォーマー」が規制の対象になると説明し、グーグルやフェイスブックの具体名を挙げた。デジタル市場で寡占化によって公正な競争が阻害されることがないよう、DMUには巨大テクノロジー企業の決定を取り消したり、阻止したり、無効にできる権限が付与される。
政府は「オンラインプラットフォームは企業や社会に大きな利益をもたらしている」と認めたうえで、「少数のテクノロジー企業への権力の集中が技術面の成長を阻み、イノベーションを抑制し、個人や企業に潜在的な悪影響を及ぼしているとの共通認識が英国を含む多くの国で形成されてきた」と指摘。プラットフォーマーに対し、ユーザー情報の取り扱いに関する透明性を高めるとともに、消費者が自身に関する情報の取り扱いについて選択できるようにすることなどを求める新たなルールを導入する方針を示している。
CMAが7月に公表したデジタル市場に関する報告書によると、英国では140億ポンド(約1兆9,300億円)に上る19年のオンライン広告費のうち、グーグルとフェイスブックのシェアが約80%を占めた。CMAは両社を中心とするプラットフォーマーの市場支配力が強まっている現状を問題視し、寡占化を食い止めて公正な競争を維持するには現行規制では不十分との認識を示していた。
政府はCMAの提言を踏まえて新組織を通じた監視強化策を打ち出した。シャーマ・ ビジネス・エネルギー・産業戦略相は「グーグルやフェイスブックのようなデジタルプラットフォームは経済に大きく貢献し、われわれの日常生活で大きな役割を演じている。しかしながら、ごく少数のテクノロジー企業による寡占化はイノベーションを阻み、広告費を押し上げ、消費者の選択肢を狭める怖れがある」と指摘した。