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電気駆動の自律走行車における車載システムの安全性の確保を目指すドイツの産学連携プロジェクト。不具合の起きた車載システム上の部品を遮断しつつ、安全な走行に重要な部品に電力供給を継続する新しいモジュールを開発した。これにより、不具合が発生した後も、車載システムの一部は継続して作動し、例えば、路肩や駐車場などの安全な場所へ車両が移動できるようにする。

電気駆動の自律走行車における電力供給は、高電圧電池と従来の12ボルト電池(停止中や高負荷がかかる際に電力を供給する電池)の2ルートがある。当該プロジェクトでは、このうちの1つにショートなどの不具合が発生した場合にも、車載システムの機能が完全に停止してしまわないよう、車載システム上の不具合を遮断して、不具合の影響が他の部品に広がらないようにする仕組みの構築を研究した。

当該モジュールはすでに独自動車大手BMWの電気自動車「i3」に搭載した試験で好結果を得られている。また、原則として、あらゆる電気自動車に装備できる設計となっている。

研究チームが開発したシステムは、パワーエレクトロニクスにスイッチデバイスとして電界効果トランジスタの一種であるMOSFETを16個、使用しており、180アンペアまでの電流を問題なく導通することができる。ショートなどが原因で180アンペアを超えると、スイッチが作動し、電力供給を遮断する。MOSFETスイッチは300アンペアにも対応できるが、上限よりもはるかに低い電圧にとどめることで、これまでよりも大幅に長い寿命を確保することができる。

当該システムの試験では、700アンペアまで不具合の発生した部品の電力供給を確実に遮断することができることが分かった。スイッチが作動する速度も従来システムの約20ミリ秒から大幅に短縮した。10マイクロ秒以内に不具合を検出し、300マイクロ秒以内に作動することができる。

プロジェクト予算は630万ユーロ。このうち、ドイツ連邦教育研究省(BMBF)が365万ユーロを支援している。調整役は、フラウンホーファー・集積システム・デバイス技術研究所(IISB)が務める。当該プロジェクトには、下記の企業・機関が参加している:

BMW、フラウンホーファー・集積システム・デバイス技術研究所(IISB)、フラウンホーファー・信頼性・マイクロインテグレーション研究所(IZM)、Kromberg & Schubert Automotive、Robert Bosch、Siemens、smartCable

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