欧州中央銀行(ECB)は10日に開いた定例政策理事会で、追加の量的金融緩和を決めた。新型コロナウイルス感染拡大の第2波に見舞われている欧州で、各国が経済・社会活動の制限を強化しているため、さらなる景気悪化が避けられない情勢となっていることを受けたもの。国債、社債などの資産を購入する「パンデミック緊急購入プログラム(PEPP)」と、「TLTRO」と呼ばれる長期資金供給オペ(金融機関が融資を増やすことを条件に低利で長期資金を供給するオペ)を拡充する。
PEPP はECBが新型コロナウイルスの感染拡大で揺れるユーロ圏経済を下支えするため、3月に導入した措置。当初の資産購入枠は7,500億ユーロだったが、6月に1兆3,500億ユーロに拡大していた。今回の追加緩和では、購入枠を5,000億ユーロ上積みし、1兆8,500億ユーロとする。実施期限を21年6月末から22年3月末まで延長することも決めた。
ユーロ圏の銀行に最低マイナス1%の超低金利で長期資金を供給するTLTROは4月に決定し、6月に開始されたもの。適用期限を1年延長し、22年6月まで実施する。供給額は対象銀行の融資残高の50%が上限となっていたが、55%に引き上げる。
このほか、銀行がECBから資金供給を受ける際の担保となる債券の要件を緩和し、ジャンク債と呼ばれる投資不適格級の国債、社債の一部も担保として受け入れる措置の期限を21年9月から22年6月まで延長することを決めた。
ECBの金融緩和拡大は6月以来。ラガルド総裁が10月の理事会後の記者会見で、事実上の予告を行っていたことから、予想通りの内容となった。
ユーロ圏は7~9月期の域内総生産(GDP)が前期比12.5%増となり、景気後退から脱したが、新型コロナ感染が再拡大していることから、10~12月期は再びマイナス成長となることが必至。インフレ率もマイナスが続いている。ECBは同日公表した内部経済予測で、20年の成長率をマイナス7.3%とし、前回(9月)の同8.0%から上方修正したものの、21年はプラス5.0%から同3.9%に引き下げた。20年のインフレ率は0.3%から0.2%に下方修正した。
ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、ユーロ圏では21年末までにワクチン接種の効果が出て、経済活動が通常に戻るとの見通しを示しながらも、当面は下振れリスクがあるとして、追加金融緩和の必要性を強調。必要に応じてPEPPの購入枠を拡大する用意があることを明らかにした。