2020/12/21

EU情報

対英FTA交渉、期限の20日までに合意できず

この記事の要約

EUと英国の自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉は、欧州議会が期限としていた20日までに合意できなかった。公平な競争環境の確保、漁業権をめぐる問題で溝が埋まらず、協議が依然として難航している。今後も交渉を続けるが、欧州 […]

EUと英国の自由貿易協定(FTA)締結に向けた交渉は、欧州議会が期限としていた20日までに合意できなかった。公平な競争環境の確保、漁業権をめぐる問題で溝が埋まらず、協議が依然として難航している。今後も交渉を続けるが、欧州議会は合意に至ったとしても時間切れで、「移行期間」が終了する年末までに承認することはできないとしており、FTAが発効しないまま21年を迎える可能性が強まってきた。

交渉では公平な競争環境の確保、漁業権、紛争解決の仕組みをめぐって対立が続いてきた。このうち紛争解決の仕組みについては、欧州委員会のフォンデアライエン委員長が16日に欧州議会で「ほぼ解決した」と報告。双方の首席交渉官は残る2分野での合意を目指し、集中協議を行っていた。

欧州議会はFTAで合意したとしても、合意内容を精査する必要があることから、年内に承認するためには20日中に合意しなければならないと警告していた。しかし、EUのバルニエ首席交渉官と英国のフロスト首席交渉官は同日中に合意できなかった。

公平な競争環境をめぐっては、英国側が労働者と環境の保護を含むEUの現行規制から後退するような規制を導入しないことに同意し、協議が進展したもよう。ただ、違反した場合に経済制裁を発動できる仕組みを設けるというEUの要求についての調整が難航している。

同問題より深刻なのが漁業権をめぐる交渉。漁業がEU、英国の経済に占める割合は小さいが、英国のジョンソン首相は主権回復と象徴として、英国の排他的経済水域(EEZ)を同国が完全に管理し、EU漁船を締め出そうとしている。これにフランスなどEUの沿岸国が猛反発している状況だ。

同問題ではEU側が譲歩し、移行期間を設けた上で、同期間終了後にEU漁船の漁獲高を減らすことに同意した。前週の協議では、移行期間を3年に限定したい英国側に対して、当初要求していた8年から6年に短縮することを提案。漁獲高削減幅についても、当初の15~18%から25%まで引き上げるとして譲歩した。それでも、80%削減を主張する英国側との溝は深く、20日の協議でも合意に至らなかった。

EU、英国ともFTAが発効しないまま移行期間が終了し、双方の貿易に関税が復活する事態は避けたい考えで、合意期限が何度も過ぎたが交渉を続けてきた。目下の最大の争点である漁業権をめぐる問題は、本来はFTAの枠外にあるものの、英国がEU単一市場にアクセスできる状態が続く代わりに漁業も現状維持とすることを求め、一括して協議しているものだ。双方にとって経済的には大きな影響を及ぼさない同問題のためにFTAを犠牲にするのは忍びないという思惑が働いているもようだ。今後の協議で互いに譲歩しあい、着地点を見出せるかどうかが焦点となるが、残された時間は少ない。

EU側は英国と合意した場合、欧州議会による承認が年明けになることから、議会承認まで暫定発効させることを検討しているとされるが、議会軽視として批判を浴びるのは必至だ。また、漁業権で過大に譲歩すれば、フランスが拒否権を発動し、批准できない恐れもあり、FTAをめぐる情勢は混迷を深めてきた。