欧州委員会は10日、欧州連合(EU)と英国の自由貿易協定(FTA)など将来の関係をめぐる交渉が年内に妥結せず、合意がないまま同国の欧州連合(EU)離脱「移行期間」が終了する事態に備えた緊急対応策を発表した。運輸、漁業が対象で、英国との特別な取り決めによって当面は混乱が生じないようにする。
欧州委はEUと英国の交渉が決裂し、合意がないまま1月に新たな関係に突入した場合は多くの分野で影響が出るが、とくに大きな混乱が避けられない運輸、漁業に絞って緊急対応策をまとめた。
運輸ではEUと英国を結ぶ一部の航空便の運航と陸上輸送について、1月1日以降も最長6カ月間は現状維持とし、往来が妨げられないようにする。英国側も同様の措置を講じることが条件となる。英仏海峡トンネルの鉄道、道路輸送に関しては、安全確保などに関する英仏間の新協定が締結されることを視野に、2カ月間は現状維持とする。
漁業ではEU、英国の漁船が21年12月末まで、これまで通りに互いの水域で操業できるようにする。同期間中にEUと英国が新たな漁業協定を締結した場合は、期限を待たずに同協定が施行される。
同緊急対策は加盟国、欧州議会の承認が必要となる。このほか、欧州委はEUの次期中期予算から50億ユーロを拠出し、域内の事業者が混乱した状況に対応できるよう支援することを近く提案する。