イタリアのコンテ首相は1月26日、マッタレッラ大統領に辞表を提出した。レンツィ元首相が率いる少数政党「イタリア・ビバ」の連立政権離脱で連立与党は上院で半数を割り込み、政権運営が立ち行かなくなると判断した。国民に人気の高いコンテ氏がマッタレッラ氏から再び首相候補に指名され、各政党に支持を呼びかけて新政権の樹立を目指すとの見方が有力だが、連立再構築に向けた協議が不調に終わった場合は早期の議会解散、総選挙になる可能性もある。
政局の混乱は、新型コロナからの経済の立て直しに向けた予算案を巡る対立から、レンツィ氏が1月半ばにイタリア・ビバ所属の閣僚2人の辞任と連立からの離脱を表明したのがきっかけ。同氏は医療や教育への配分が不十分などと批判し、コンテ氏の退陣をもくろんだが、コンテ氏は18、19日に上下両院で行われた信任投票で信任された。このためひとまず政権崩壊は回避されたが、上院で連立与党の議席が過半数を下回り、安定した政局運営は困難な情勢となった。
コンテ氏が再び首相候補に指名された場合、連立与党の左派ポピュリズム政党「五つ星運動」と中道左派「民主党」は同氏を支持すると表明しているが、新たに少数政党の支持を獲得して政権基盤を固めたいところ。一方、野党からは総選挙を求める声が上がっており、連立協議が行き詰まった場合は早期解散、総選挙の現実味が増す。
また地元メディアによると、レンツィ氏は欧州中央銀行(ECB)のドラギ前総裁を次期首相に推していると報じたが、マッタレッラ氏の側近によると、大統領はこの可能性についてドラギ氏と話し合いは行っていないという。新型コロナウイルスの感染封じ込めやコロナ禍で深刻な打撃を受けた経済の立て直しなど、課題が山積する中で政局の混乱を招いたレンツィ氏に対しては、「意味のない政権の危機でコンテ首相は辞任に追い込まれた」(ディマイオ外相)など、批判の声が集まっている。