英製薬大手アストラゼネカと英オックスフォード大学が開発した新型コロナウイルスのワクチンをめぐり、高齢者に対する有効性についての判断が国によって分かれている。英国やインドが18歳以上の全年齢層への接種を推奨しているのに対し、ドイツやフランスなどは「データが不足している」として、65歳以上への接種を控えるよう相次いで勧告を出した。英政府は全ての年齢層に対して効果があると反論している。
欧州委員会は1月29日、欧州医薬品庁(EMA)の勧告を受け、18歳以上の全年齢層を対象にアストラゼネカ製ワクチンを承認した。しかし、独ロベルト・コッホ研究所のワクチン委員会はこれに先立ち、高齢者に対する効果について「十分なデータが得られていない」として、65歳以上への接種を推奨しない方針を表明。仏当局も今月2日、当面は接種対象を65歳未満とするよう勧告した。高齢者に対する有効性のデータは数週間以内に得られる見通しで、その段階で改めて評価するとの方針を示している。このほかスウェーデンやベルギーなどでも同様の勧告が出されている。
こうした動きに対し、ハンコック英保健相は3日、BBCラジオの番組に出演し、オックスフォード大が前日に公表した論文をもとに「アストラゼネカ製ワクチンの高い有効性はより明確になった」と強調。マクロン仏大統領が同ワクチンについて、65歳以上の人には「ほぼ効果がないとみている」などと発言したことに関する質問を受け、「科学者の意見を聞くべきだと言いたい」と反論した。
アストラゼネカのワクチンは臨床試験(治験)の最終段階で平均70%の有効性が確認されたが、オックスフォード大の論文によると、1回目の接種から2回目までの3カ月間の有効性が76%に上ることなどが分かった。ただ、高齢者に対する有効性についての追加データは示されていない。
一方、アストラゼネカは5日、新型コロナワクチンの製造・販売承認を厚生労働省に申請した。国内での承認申請は米ファイザーに続いて2例目。同社は昨夏から国内で治験を実施しており、約6万人を対象とした全世界での治験結果と併せて3月中に最新データを提出する。
アストラゼネカは日本政府との間で1億2,000万回分(6,000万人分)のワクチン供給契約を結んでおり、承認されれば国内の製造拠点から9,000万回分が供給される見通しだ。