伊の新首相にドラギECB前総裁、組閣協議は難航必至

イタリアのマッタレッラ大統領は3日、次期首相候補に欧州中央銀行(ECB)のドラギ前総裁を指名し、組閣を要請した。ドラギ氏は要請を受け入れ、新政権発足を目指して組閣に向けた協議を開始した。ただ、各党との交渉は難航が予想され、不調に終われば総選挙の可能性も浮上してくる。

ドラギ氏は記者会見で「新型コロナウイルスによる緊急事態で状況を改善するための対応力が求められている。各党との協議を通じて団結が生まれ、責任ある回答が得られると確信している」と述べ、組閣作業にあたり各党に支持を訴えた。

地元メディアによると、連立与党の中道左派「民主党」はドラギ氏の支持に前向きな意向を示しているが、最大与党の左派ポピュリズム政党「五つ星運動」は不支持を表明している。一方、政局の混乱を引き起こしたレンツィ元首相が率いる少数政党「イタリア・ビバ」は、ドラギ氏を支持しているもようだ。新政権が議会で過半数を握るには、五つ星や極右「同盟」を中心とする野党の「中道右派連合」の支持を取りつける必要がある。

マッタレッラ氏はコロナ禍が続く中での選挙は回避したい考えを表明しているが、組閣協議が決裂した場合、議会を解散して前倒し選挙を実施する可能性も出てくる。同盟は政府のコロナ対応への不満の受け皿として急速に支持を拡大しており、同党幹部は1年以内の総選挙実施を条件に、ドラギ氏を支持する意向を示したとされる。

ドラギ氏は2011年11月から8年間にわたりECB総裁を務め、マイナス金利政策や量的緩和政策を推し進めて欧州債務危機を収束させた。

政局の混乱は、新型コロナからの経済の立て直しに向けた予算案を巡る対立から、レンツィ氏が1月半ばにイタリア・ビバ所属の閣僚2人の辞任と連立からの離脱を表明したのがきっかけ。同氏は医療や教育への配分が不十分などと批判し、コンテ氏の退陣をもくろんだが、同氏は上下両院で行われた信任投票で信任された。このためひとまず政権崩壊は回避されたが、上院で連立与党の議席が過半数を下回り、安定した政局運営は困難な情勢となったことから、コンテ氏は1月26日、大統領に辞表を提出した。同氏は大統領から再び首相候補に指名されて新政権の樹立を目指したが、閣僚人事などで折り合いがつかず、各党との交渉は失敗に終わった。

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