英中央銀行のイングランド銀行は4日、前日まで開いた金融政策委員会の議事要旨を公表し、マイナス金利の早期導入には否定的な見解を示したうえで、将来必要になった場合に備えて準備を開始するよう金融機関に求めた。これを受けて市場では利下げ観測が後退し、ポンドが対ドルで0.5%上昇したほか、英国の10年債利回りは2020年3月以来の高水準となった。
マイナス金利は日銀や欧州中央銀行(ECB)が導入している。英中銀は新型コロナウイルス感染拡大で打撃を受けた経済を下支えするため、20年3月に2度の利下げで政策金利を0.75%から過去最低の0.1%に引き下げるとともに、国債や社債などの買い入れを再開。その後は段階的に債権購入枠を拡大して量的緩和を進めながら、昨秋以降はマイナス金利政策を実施する場合の課題について検討してきた。
議事要旨によると、中銀は金融監督機関および金融機関との協議を通じ、マイナス金利を「6カ月より短い期間に導入した場合、運用上のリスクが高まる」と分析。現時点でマイナス金利を導入する必要はないが、将来必要になった場合に実行できるよう、「準備を開始するのが適切」と結論づけた。
金融機関に準備を促すことについて、金融政策委ではマイナス金利の導入が近いとのシグナルと受け止められるリスクを指摘する意見も出た。ベイリー総裁は記者会見で、今回の決定はコロナ禍からの景気回復が遅れた場合の政策手段を確保しておくための措置であり、「将来の金融政策の道筋を読み取ろうとすべきではない」とくぎを刺した。
金融政策委では政策金利を0.1%に据え置き、量的緩和策の資産購入枠も8,950億ポンドで維持することを全員一致で決めた。
一方、中銀は同時に公表した四半期ごとの金融政策報告書で、21年1~3月期は新型コロナによるロックダウン(都市封鎖)の継続で、実質国内総生産(GDP)が前年比4.%減になるとの予測を示した。4~6月期以降はワクチン接種の進展に伴い、コロナ危機以前の水準に向けて急速に回復するとみており、通年では前年比5%の成長を見込む。20年11月時点の成長率予想は7.25%だった。