墺チロル州やチェコを変異種地域に指定、国境検査導入で物流に懸念

ドイツ内務、外務、保健省は12日付けの文書で、スロバキアおよび国境を接するオーストリアのチロル州とチェコを新型コロナウイルス変異種地域に指定することを明らかにした。隣国を同地域に指定するのは初めて。14日からチロルとチェコを対象に国境検査を開始しており、入国を拒否される人が多数、出ているほか、検査待ちの長い渋滞が発生している。変異種の感染はフランス東部でも増えており、今後の状況次第ではドイツが変異種地域に指定する可能性がある。

ドイツ政府はコロナ変異種流行国からの入国制限を1月末に導入した。航空、鉄道、バス、海運会社はドイツの国籍保有者や在住資格保有者、トランジットでドイツの空港を利用する人など一部の例外を除き、輸送サービスを提供できなくなくなった。これまでの指定対象国はボツワナ、ブラジル、エスワティニ、アイルランド、レソト、マラウイ、モザンビーク、ポルトガル、南アフリカ、英国、ザンビア、ジンバブエの12カ国だった。

チロルとチェコは国境を接していることから、政府は国境検査を導入した。ドイツ国籍保有者やドイツ在住者、国境を超えて通勤する人の一部、物流関係者を除き、チロルとチェコからは基本的に入国できなくなっている。通勤できるのは医療・介護、公益事業、食品製造など社会・経済機能を維持するうえで重要な業務に従事する人に限られる。入国するためにはPCR検査による陰性証明の提示が必要となる。

チロルでは南アフリカ種が流行しており、48時間以内に発行された陰性証明がない限り州外に出ることができなくなっている。ドイツは難民問題対策の一環としてオーストリア国境で以前から検査体制を敷いているが、新たにコロナ変異種でも入国検査を実施する。

チェコでは新型コロナ感染に占める英国種の割合が一部の地域で60%に達しており、同国政府はすでに3地域を封鎖した。そのうち2地域はドイツとの国境地帯にある。バイエルン州でもチェコ国境に近いティルシェンロイト市で同割合が約70%、ヴンジーデル市でも40%強に達しており、州当局は危機感を強めている。

一方、経済界は国境検査導入の影響を懸念している。独自動車工業会(VDA)のヒルデガルト・ミュラー会長は、「我々の業界はハンガリー、チェコ、スロバキア、南欧・東欧のその他の諸国にある工場からの日々の部品供給に依存している」と指摘。部品供給が止まればドイツの工場は短期間で操業停止に追い込まれると危機感を表明した。15日時点で操業を停止した工場はないものの、国境ではトラックの渋滞が発生していることから長期化するとしわ寄せが出てくる可能性がある。経済活動への影響は幅広い分野で懸念されている。

フランスでは独ザールラント、ラインラント・ファルツ両州に接するモゼル県で南ア種とブラジル種の感染が増えている。オリビエ・ベラン仏保健相は12日、過去4日間で計300人の感染が確認されたことを明らかにした。感染者は国外からの帰国者や、帰国者と接触した人ではなく、感染ルートを特定できない状況だ。

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