「スローツーリズム」を目指せ!~チェコ

プラハ市が新型コロナを機に、「オーバーツーリズム」から「スローツーリズム」への転換を目指している。物価の安さを目当てに飲み騒ぐ旅行客ではなく、プラハの歴史や文化財の価値がわかる訪問客を増やしたいというのが住人の願いだ。

プラハを訪れた人は昨年、人口の6.5倍に当たる800万人に上った。市の中心部は旅行者用のアパートに占領されて家賃が上がり、元々の住民は引っ越しを余儀なくされていた。酔って騒ぐ旅行者の騒音に、飲食店や宿泊施設の周辺に住む人は頭を抱えるばかり。無作法な旅行者に生活が脅かされる「オーバーツーリズム(観光公害)」が問題となっていた。

ところが、新型コロナがこの状況を一変させた。4-6月期の訪問客数は前年同期の5%強へと激減し、街の混雑が解消した。観光スポットのカレル橋を普通に歩き、はたまた自転車に乗って渡ることさえできるようになり、プラハ市民は「わが町」の回帰を喜んでいる。

プラハ市のシェシティーコヴァー(Trestikova)市議は、コロナ後の観光業を見据え、「プラハに新しいタイプの観光客を呼び寄せる戦略を練っているところ」と話す。目指す姿としては、◇文化的遺産に触れる目的で訪れる観光客を増やす(インスタ映え・パーティー目的の訪問を減らす)◇プラハの中心地が旅行客であふれる状況をなくす◇オフシーズンの観光促進◇国内からの観光客を増やす――といった点を挙げる。

しかし、実現するための具体策となると難しい。これまでのところ、◇中心部のアパートを買い占め民泊施設として提供する業者を取り締まる法律の制定◇居酒屋が中心地ではなく周辺地区で営業するよう促す措置――が挙がっているだけだ。

プラハ市の観光業界は新型コロナの影響で今年の売上高が25億ユーロ減ると予想されている。観光収入の大きさから考えても、規制を強めるのは容易ではない。観光客は「コロナで去ったのと同じぐらい速く戻ってくる」といわれ、市の対策が効果を発揮するには、迅速な法整備が一つのポイントになりそうだ。

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