2020/8/26

テクノロジー

ポーランドが中東欧のイノベーション拠点に、スタートアップ振興を通じ

この記事の要約

ポーランドが中東欧地域のイノベーションの拠点となりつつある。スタートアップの育成や先端技術産業の誘致などに積極的なことに加え、政府のスタートアップ促進事業や高度なスキルを持つ労働者などを背景に外国からのベンチャー投資も集 […]

ポーランドが中東欧地域のイノベーションの拠点となりつつある。スタートアップの育成や先端技術産業の誘致などに積極的なことに加え、政府のスタートアップ促進事業や高度なスキルを持つ労働者などを背景に外国からのベンチャー投資も集めており、同国には欧州連合(EU)の支援に頼らないスタートアップのエコシステム(ビジネス生態系)が構築されている。

政府は新しい開発戦略の中で成長の新たな原動力を規定し、デジタル化をカギとして推進してきた。同国のスタートアップ振興を目的とする中欧最大級のプラットフォーム「Start in Poland」には政府のスタートアップ育成事業やベンチャーキャピタルなどを通した資金の獲得、アクセラレータプログラムなどに関する情報が集約されており、スタートアップの育成と成長に向けた体制が整備されている。

■豊富なテック系人材

ポーランドの労働市場には高度なテクノロジースキルを持つ労働者が多く存在する。人材の流動性も高く、同国は東欧最大の人材の供給源となっている。グローバル企業も多く進出しており、米半導体大手インテルはグダニスクに最大級の研究開発施設を開設している。

同国のビジネスサービス関連企業が参加する業界団体のABSLによると、ポーランドの平均給与は月額830ユーロ。一方ソフトウエアの開発者はその3倍から7倍を得ることができる。このためソフト開発を志向する労働者が増えており、テクノロジー(テック)系の人材拡大に寄与している。

西欧ではテック系の人材が不足しており、東欧はアウトソーシング先としての期待も高い。ベンチャーキャピタルAtomicoの報告書「欧州テックの現状」によると、欧州全体には610万人の開発者がいるが、東欧では西欧に比べ十分な機会が与えられていない。またアクセラレータプログラムやワルシャワにある米グーグルのイノベーション・キャンパス(グーグルキャンパス)のようなコワーキングスペース、イノベーションラボがテックシーンを刺激している。ポーランドの若者は社会科学や技術分野に集中する傾向があり、『ハーバード・ビジネスレビュー』によると、同国は労働者のテック系のスキルで世界5指に入る高水準の労働市場となっている。

■進むクラウドの拠点化/高まる海外の注目

クラウドシステムへの移行が進んでいることも同国の魅力を高めている。2020年5月に米マイクロソフトはポーランドにおけるデジタル変革プランに10億ドルを投じると発表。クラウドサービスの拠点を整備するため、同地域で初となるデータセンターを設置する計画を明らかにした。また競合のグーグルも昨年秋、クラウドサービスのハブとなるデータセンターを中東欧で初めて開設している。

同国では2019年に官民ファンドから225のプロジェクトに資金が供給されており、EUからの支援に頼らない自立に向けた動きが実を結びつつある。またこの地域に対する世界の注目も高まっており、PFRベンチャーズなどによると、ポーランドのスタートアップに対する海外からのベンチャーキャピタル投資は85件・2億9,400万ユーロに上った。

■コロナ禍でも盛況のテック界隈

新型コロナウイルスの経済への影響が懸念される中、ポーランドのテクノロジーセクターはうまく乗り切りつつある。リモート技術に注目が集まる中で国際的なハッカソン(システム開発のイベント)が開催され、1,500人以上の参加者を集めた。2014年に始まった同地域最大のテック系イベントである「Starup Chapter」は、現在では参加者の4分の3が他の中東欧を中心とする国外から参加する国際的なものとなっている。国内では首都ワルシャワのみならず、クラクフ、ウッチ、グダニスクなど他の都市でもスタートアップ企業が育っており、同国ではスタートアップのエコシステムが機能しているのも特徴だ。