独仏の一部国境で入国検査強化、通勤者にも48時間以内の陰性証明義務付け

ドイツ政府は2日、フランス東部のモゼル県を「新型コロナウイルス変異種地域」に指定した。これにより同県からの入国規制は大幅に強化。48時間以内に発行された陰性証明の携帯が通勤者も含めて義務付けられた。陰性証明はPCR検査だけでなく、精度はやや低いものの検査結果がすぐに判明する抗原検査でも認められている。

モゼル県では従来種に比べ感染力の高い南アフリカ種が流行している。人口10万人当たりの直近7日間の新型コロナ新規感染者数は310人と極めて高い。フランス政府はこれを受け、同県に接する独ラインラント・ファルツ、ザールラント両州からの入国者に陰性証明の携帯を義務付けるルールを1日付で導入した。モゼル県に入った両州の住民が起点となりドイツでもアフリカ種の感染が広がることを避けることが狙いと説明している。

ドイツ政府は南ア種や英国種など感染力の高い変異種が流行している国・地域を新型コロナウイルス変異種地域に指定。これらの国・地域からの入国には陰性証明の提示が必要となっている。また、航空会社やバス会社は独国籍保有者や在住資格保有者以外をドイツ向けに輸送することを原則的に禁止されている。

政府は2月中旬、スロバキア、チェコ、オーストリアのチロル州を同地域に指定した。国境を接するチロルとチェコで国境検査を開始したことから、入国審査待ちの渋滞が発生している。

ドイツは感染の第1波が始まった昨年3月、フランスなど5カ国との国境を封鎖した。物流や通勤は対象外としたものの、フランスからラインラント・ファルツ、ザールラントへの通勤者は実際には入国に毎日、苦労した。このためフランス人の対独感情がやや悪化するという問題が発生していた。

今回はそうした事態を避けるため出入国検査を国境で行わず、両州内で抜き打ち的に行うことにした。これにより、国境での渋滞発生を回避する狙いだ。抜き打ち検査で陰性証明を提示できない場合は保健所に通報されたうえで、テストセンターで検査を受けることを指示される。

ザールラント州には自動車業界の生産施設が多く、州政府はフランスからの通勤者が工場などで無料検査を受けられる体制を整えた。

だが、フランス側からはドイツの措置への批判が出ている。ドイツ側の配慮にもかかわらず、2日に1回の頻度で抗原検査を受けなければならない通勤者の負担は大きいためだ。通勤者のしわ寄せを避けるため両国政府は事前に協議し合意に達していてが、合意の理解で両国間に違いがあったもよう。

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