ワクチン調達で加盟国の足並みに乱れ、2カ国はイスラエルと共同開発へ

EUで新型コロナウイルスのワクチン接種が計画通りに進まず、加盟国の足並みが乱れている。ワクチン調達はEUを代表して欧州委員会が窓口になっているが、変異ウイルスの感染が急速に広がる中、共同調達だけに頼ることはできないとして、ロシアや中国から独自にワクチンを調達したり、第3国と次世代ワクチンの共同開発を目指すなどの動きが出ている。

オーストリアのクルツ首相とデンマークのフレデリクセン首相は4日、イスラエルのネタニヤフ首相とエルサレムで会談し、新たな変異ウイルスに備えて3カ国で次世代ワクチンを共同開発することで合意した。英フィナンシャルタイムズによると、3カ国はmRNAワクチンの製造拠点をそれぞれ国内に建設する方針で、同タイプのワクチンを開発した米ファイザーや米モデルナと協議を進めているという。

共同開発の構想はクルツ氏が3月1日に表明した。同氏は欧州委によるワクチンの共同調達は「基本的に正しい」としたうえで、欧州医薬品庁(EMA)の承認が「あまりに遅い」と非難。新たな変異ウイルスの広がりなどで、今後は国民の3分の2程度に毎年、ワクチンを接種する必要があるとの専門家の見解に触れ、「これ以上、EUだけに依存するわけにはいかない」と強調。フレデリクセン氏とともに急ピッチで接種を進めているイスラエルの状況を視察し、将来のワクチン生産などについて話し合うと説明していた。

こうした中、スロバキア政府は1日、EUで未承認のロシア製の新型コロナワクチン「スプートニクV」を200万回分調達すると発表した。4月中に半数が到着する見通しで、マトビッチ首相は接種ペースを40%加速させることができると説明している。ただ、連立与党「人々のために」はロシア製ワクチンの購入に反対しており、マトビッチ氏の主導で秘密裡にスプートニクVの調達準備を進めていた。

また、チェコのバビシュ首相も2月28日、スプートニクVの調達を検討していることを明らかにした。同氏はCNNプライムニュースに出演し、「ロシア製ワクチンに強い関心を持っている。EMAの承認を待つことはできない」と述べ、早期承認に意欲を示した。また、イスラエルやドイツのザクセン州からもワクチンの供給を受けることで合意したことを明らかにした。

スプートニクVはこれまでに40カ国以上で承認されており、EU内ではハンガリーが1月末に独自承認して接種を開始した。さらにハンガリーは中国医薬集団(シノファーム)が開発したワクチンもEUで初めて承認し、500万回分の購入契約を結んでいる。

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