EU当局、ロシア製ワクチンの審査開始

EUの欧州医薬品庁(EMA)は4日、ロシア製の新型コロナウイルスワクチン「スプートニクV」の審査を開始したと発表した。試験データを順次審査する「逐次審査」の対象とし、通常より手続きを簡素化して審査を進める。承認されれば、欧米の製薬会社以外のメーカーのワクチンが初めてEUで使用されることになる。

これまでにEUでは米ファイザー、モデルナ、英アストラゼネカが開発したワクチンが承認され、接種が始まっている。ロシアの国立ガマレヤ研究所が開発し、2020年8月にロシア政府に承認されたスプートニクVをめぐっては、最終治験の終了を待たずに承認されたため効果と安全性に疑問があるとして、EUの調達計画の対象外となってきた。EU加盟国で利用されているのは、1月に独自に承認したハンガリーだけだ。

風向きが変わったのは、英医学誌ランセットが2月、臨床試験(治験)の最終段階で91.6%の効果が確認されたという論文を発表したのがきかっけ。これまでに40カ国以上で承認され、EUでもスロバキアが先ごろ調達する意向を表明した。

EMAはスプートニクVの逐次審査をロシアの製薬会社Rファームのドイツ子会社を通じて申請された。EMAはこれまでの治験や研究結果で、新型コロナへの有効性が示されているとして申請を受理し、審査を開始した。

逐次審査は感染症の世界的流行などの緊急時に際して、必要なワクチンや治療薬の承認手続きを迅速化する仕組み。通常は臨床試験(治験)の最終データがまとまってから承認が申請され、審査を開始するが、同制度では承認が正式に申請される前の段階で、最終的な試験結果を待たずに入手可能なデータから順次審査を進める。このため通常より短期間で審査を完了することができる。

これまでにEMAが承認した新型コロナワクチンは、すべて逐次審査を適用された。審査開始から承認までの期間は2~4カ月だった。

欧州委員会は4日、EUがスプートニクV調達に向けた交渉を現時点では行っていないことを明らかにしたが、同ワクチンを海外に売り込んでいるロシア直接投資基金(RDIF)は、EUで承認されれば6月から5,000万回分を供給できるとしている。

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