ロシアと中国が共同で月探査基地を整備する。米国が主導する月周回有人ステーション計画に対抗する形だ。宇宙開発分野における威信回復を目指すロシアと、新興勢力として技術力のさらなる強化を目指す中国の思惑が一致した。
両国の宇宙開発機関は9日、月面または月周回軌道上、あるいは双方に探査拠点を設けることで基本合意書を交わした。実験科学の研究の場として活用する方針で、第三国にも利用を認める。ドローンを用いた月面探査や、資源の探査・利用も視野に入れる。まずは基地整備計画の具体化に取り組む。
米航空宇宙局(NASA)は欧州宇宙機関(ESA)などと提携し、月周回軌道に有人ステーション「アルテミス・ゲートウェイ」を設置する計画に取り組んでいる。ロシアは先ごろ、同計画には参加せず、独自計画を推進する方針を明らかにしていた。2028年の月面有人探査を目指している。
ロシアは旧ソ連邦時代の60年前に世界初の有人宇宙飛行を実現し、月にも複数の無人探査船を送り出した。しかし、米国に次ぐ有人月面着陸はまだ達成していない。最近では、国際宇宙ステーションISSへの宇宙飛行士輸送のロシア独占も米スペースXに破られるなど、過去の華々しい業績が色あせてきている。
一方、中国は2013年に「嫦娥(じょうが)3号」が月面軟着陸を達成。19年には月の裏側に探査車を送り込み、昨年には月から岩石などのサンプルを持ち帰るミッションを成功させた。民用宇宙開発を担う国家航天局(CNSA)は、19年4月の時点で「10年以内に月の南極点に基地を設ける」方針であることを明らかにしている。