英政府が会計監査と企業統治の改革案発表、ビッグ4以外の起用促進など柱

英政府は18日、会計監査と企業統治の改革に向けた具体策をまとめた報告書を公表した。世界規模で事業展開する4大監査法人による寡占状態を是正するため中堅クラスの起用を促し、企業の経営陣に財務情報の開示についてより大きな責任を負わせることなどを柱とする内容。7月中旬まで意見募集を行い、各方面からの意見を踏まえて最終案をまとめる。

英国では近年、大企業の倒産が相次ぎ、直前まで経営悪化の警鐘を鳴らさなかった監査法人への批判が高まっていた。こうしたことから企業統治の監督当局である財務報告評議会(FRC)は昨年7月、「ビッグ4」と呼ばれるデロイト・トウシュ・トーマツ、アーンスト・アンド・ヤング(EY)、KPMG、プライスウォーターハウスクーパース(PwC)の4大監査法人を対象に、監査部門をコンサルティングなど他部門から独立させる方針を打ち出すなど、段階的に改革を進めている。

民間企業・エネルギー・産業戦略省が今回まとめた報告書では、主要上場企業の利用が4大法人に集中している点を問題視。寡占化を是正するための具体策として、ロンドン証券取引所の株式指標「FTSE350」を構成する時価総額上位350の上場企業に対し、グループ企業の監査にビッグ4以外の起用を促すことを提言している。マザー、グラントソントン、BDOなど「チャレンジャー」と呼ばれる準大手の参入を促し、競争を促進して質の向上を図るのが狙い。状況が改善されない場合は4大法人のシェアに上限を設けることも検討する。

経営陣の責任に関しては、会計処理などで重大な不正が見つかった場合、当局が取締役に職務停止や制裁金などの処分を科すことができるようにする。経営が急速に悪化した場合は役員報酬や配当の支払い停止なども可能にし、倒産リスクから企業を守る仕組みを整える。

このほかFRCを「監査・財務報告・企業統治監督機構(ARGA)」に改組し、より強力な調査や罰則などの権限を付与して監督体制を強化することも提言している。

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