2021/3/29

EU情報

EUがワクチン輸出制限強化を発表、差し止めの対象を拡大

この記事の要約

欧州委員会は24日、EU域内で製造された新型コロナウイルス用ワクチンの輸出規制を強化すると発表した。EUでワクチンが不足し、接種が遅れていることを受けたもので、輸出制限の対象を広げる。同方針は25日に開かれたEU首脳会議 […]

欧州委員会は24日、EU域内で製造された新型コロナウイルス用ワクチンの輸出規制を強化すると発表した。EUでワクチンが不足し、接種が遅れていることを受けたもので、輸出制限の対象を広げる。同方針は25日に開かれたEU首脳会議で加盟国に承認された。

EUが1月30日から導入している輸出規制は、EU域内で製造された新型コロナワクチンの域外への輸出を許可制にするというもの。これまではEUとワクチン購入の事前契約を結んだ製薬会社が、契約を順守して域内に供給しているかどうかが判断基準となっていた。

欧州委が発表した規制強化策では、これに加えて「互恵性」と「つり合い」も承認の基準とする。互恵性は輸出先の国が自国内で製造されたワクチン、原材料を囲い込み、輸出を制限していないかどうかをチェックし、問題があると判断すれば輸出を差し止める。つり合いは対象国の新型コロナ感染状況、ワクチン接種率をEUと比較し、ワクチン供給の重要性がEUより低いと判断すれば差し止めを検討する。

このほか、輸出制限の適用を除外している国のうち、イスラエルやスイス、ノルウェーなど17カ国を制限対象に加える方針も打ち出した。

EUは輸出制限を6月末まで実施する予定。これまでに380件の輸出申請を承認し、日本など33カ国・地域に計4,300万回分を輸出した。英国向けが約1,090万回分と最多で、カナダが660万回分、日本が540万回分、メキシコが440万回分で続く。不許可となったのは、英アストラゼネカが伊国内で製造したワクチンのオーストラリア向け輸出(約25万回分)だけだ。

EUの輸出制限は、新型コロナワクチンの調達契約を結んだ製薬会社による供給が予定より遅れ、域内でのワクチン接種が思うように進んでいないことが背景にある。変異ウイルスの感染が広がり、感染の「第3波」に見舞われていることもあり、輸出制限を強化する。

同措置には国際社会からワクチン囲い込みとの批判も出ているが、欧州委のフォンデアライエン委員長は声明で「経済協力開発機構(OECD)に加盟する国・地域で新型コロナワクチンの大規模な輸出を行っているのはEUだけだ」と指摘。首脳会議後の記者会見では、これまでの輸出が7,700万回分で、EU域内で接種された6,200万回分を上回っているとして、正当性をアピールした。

欧州委が主な標的としているのは、英国とアストラゼネカ。EUが承認したワクチンのメーカーの中でアストラゼネカによる供給が最も遅れているにもかかわらず、同社が英国には予定通り供給し、少なくとも1回目の接種を終えた成人がEUで10%程度にとどまっているのに対して英国では5割に達しているためだ。また、EUから英国に大量のワクチンを輸出しているが、英国からEUへの輸出はゼロだ。

フォンデアライエン委員長は25日、アストラゼネカを名指しで批判し、「再び輸出する前にEUとの契約を履行しなければならない」と述べた。

ただ、EUはすでに輸出規制をめぐって対立している英国とのさらなる関係悪化は避けたいところで、欧州委と英政府は規制強化発表の直後に、ワクチン供給に関して協力していくとする共同声明を発表。具体策を協議していく方針を示した。

首脳会議、ワクチン証明書発行でも合意

25日のEU首脳会議ではワクチン輸出制限強化のほか、ワクチンの接種を受けた人などにEU共通の証明書を発行し、域内を自由に移動できるようにする制度の導入に向けた作業を進めることでも合意した。

同制度は「デジタル・グリーン証明書」と呼ばれる証明書を新型コロナワクチン接種者とPCR検査で陰性の人、コロナに感染して回復した人に発行するというもの。欧州委が17日に関連法案を発表していた。今回の首脳会議では同構想を「緊急を要する案件」と位置づけ、実現に向けた作業に着手することで一致した。