ハンガリー政府がスロベニア、バーレーン、セルビア、モンテネグロの4カ国と、新型コロナ免疫保有証明書(免疫証)の有効性を相互に認める二国間合意をそれぞれ結んだ。欧州連合(EU)が域内共通のワクチン接種証明書(ワクチン証)の発行準備を進める中、一足先に部分的ながら「移動の自由」を復活させ、国民にコロナ対策の成功をアピールする狙いがあるとみられる。クロアチア、ギリシャ、イスラエル、スロバキアとも同様の措置に向けて交渉中だ。
ハンガリー当局によると、合意を結んだ国々の免疫証を保有する旅行者に対しては入国時に、隔離義務や新型コロナ陰性証明書提示義務が免除される。接種されたワクチンの種類は問わない。
欧州では予防接種を受けた人が増える中、夏のバカンスシーズンをにらんで共通免疫証の発行・移動制限の緩和について議論が盛んになっている。欧州議会は4月28日、欧州医薬品庁(EMA)が承認、あるいは世界保健機関(WHO)の緊急使用リストに挙げられたワクチンを完全に接種した者に対して、域内移動の自由を保証する案を可決した。ロシアや中国で開発された他のワクチンを接種した者については、自由な入国を認めるかどうか、各国政府の裁量にゆだねる内容だ。最終的には欧州委員会や加盟国との交渉を経て決定される。
ハンガリーは3月初めから、国内居住者のうち少なくとも1回、ワクチンの接種を受けた者および感染して治癒(ゆ)した者に免疫証を発行。1日から、免疫証保持者を感染拡大防止策の対象から除外した。同国ではEMA未承認ワクチンも使用されており、欧州議会の方針が通ると、これらのワクチンを接種した国民が域内移動を制限される懸念がある。このため、より多くの国と二国間合意を結び、EUによる制限を回避しようという思惑もあるようだ。
統計ポータルのワールドメーターズによると、ハンガリーは4日現在、人口100万人当たりの新型コロナ死亡率が2,909人と世界で最も多い。EUから配分されるファイザー/ビオンテック、モデルナ、アストラゼネカのワクチンに加え、独自判断でロシアと中国にもワクチンを発注した。4月27日時点でハンガリーに届いたもののうち、「スプートニクV」およびシノファーム製が350万回分、ファイザー、モデルナ、アストラゼネカ製が360万回分となっている。これまでに全住民約1,000万人のうち40%で、少なくとも1回目の接種が終わっている。