ルクセンブルクが米アマゾン・ドット・コムに適用していた税優遇措置をめぐり、欧州委員会が同国政府に追徴課税を命じた問題で、欧州司法裁判所の一般裁判所は12日、欧州委の命令を無効とする判決を下した。欧州委はアマゾンに対する税優遇措置はEU法が禁じる違法な国家補助にあたると訴えていたが、欧州裁は「不当な税優遇はなかった」とするアマゾンとルクセンブルク政府の主張を認めた。
欧州委は一部の加盟国が誘致や雇用創出の見返りに、特定の企業に適用している税優遇措置がEUの国家補助規定に違反している可能性があるとして、2014年に本格調査を開始した。今回の事案もその一環で、ルクセンブルクが06年から14年にかけてアマゾンに適用していた税優遇措置に関するもの。
欧州委によると、同国に拠点を置くアマゾンの子会社は税務当局との取り決めに基づいて、ウェブサイトやソフトウェアなどの利用許諾の名目で同国内の持ち株会社に使用料を払い、課税対象となる利益を減らして税負担を軽減していた。その結果、アマゾンはEU域内で得た利益の約75%について課税を免れていた。欧州委はこうした優遇措置が違法な国家補助にあたると認定し、ルクセンブルク政府に対しアマゾンに最大2億5,000万ユーロの追徴税を課すよう命じた。これに対し、アマゾンとルクセンブルク政府が命令を不服として提訴していた。
欧州裁は判決で「欧州委はアマゾン欧州子会社の税負担が不当に軽減されていたことを証明する法的根拠を示していない」などと指摘。追徴課税の命令を無効とする判断を示した。
欧州委は上級審に上訴するかどうかを検討する。一方、ルクセンブルク財務省は声明で「アマゾンへの税優遇が国家補助にはあたらないことが確認された」と指摘。アマゾンも「当社は適用されるすべての法律を遵守しており、特別扱いを受けたことはないとの長年にわたる主張に沿った内容だ」と判決を歓迎した。
欧州委は米IT大手などによる税逃れに警戒を強めているが、一般裁は昨年7月、米アップルに対する税優遇措置が違法だとして、欧州委がアイルランド政府に指示した130億ユーロの追徴課税についても命令を無効とする判断を示した。欧州委は判決を不服として上訴している。