独最大与党のキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)は9月の連邦議会選挙に向けて21日に発表したプログラム(公約)で、温室効果ガスの排出量を差し引きでゼロにする炭素中立の促進や行政や社会のデジタル化に必要な資金を経済成長に伴う税収増で賄う方針を提示した。コロナ禍で膨らんだ財政支出も速やかに正常化する意向を示している。市民の税負担は軽減する考えだ。選挙で第一党の座を争う野党・緑の党は炭素中立などを実現するための資金を富裕層への増税や新規債務の拡大を通して確保する考えを打ち出しており、CDU/CSUは差別化を図った格好だ。
連邦議会で共同会派を組むCDUとCSUは共同選挙プログラム「安定と刷新のためのプログラム~近代的なドイツの実現に向けてともに~」を公表した。アーミン・ラシェット連邦首相候補(CDU党首)は記者会見で、温暖化防止、経済力の強化、社会的な安全をバランスよく実現することが重要だと述べ、時代の変化に積極的に対応するとともに社会の安定・一体性を保つことに意欲を示した。
ドイツの主要政党では同じ中道右派の自由民主党(FDP)が増税反対と経済成長による財政資金の確保を打ち出している。ただ、最新の有権者アンケート調査をみると、CDU/CSUとFDPの支持率は最大でも計42%程度にとどまっており、両党だけで政権を樹立するのは難しい状況だ。
世界の覇権を目指す中国に対しては北大西洋条約機構(NATO)加盟国や他の民主主義国と一致団結して対処する必要があるとの認識を示した。可能性のある分野では協調する姿勢も見せている。厳しい姿勢と対話を交えたアプローチは、サイバー攻撃や偽情報の流布などで西側社会に揺さぶりをかけるロシアにも適用する意向だ。