EUと英に「ソーセージ戦争」勃発、関係悪化の新たな火種に

●英離脱後もEU単一市場に残る形の北アイルランドが舞台

●7月からは英本土からの冷蔵肉製品の入荷が禁止に

欧州連合(EU)と英国が、北アイルランドに英本土から入る冷蔵肉の扱いをめぐって対立している。英のEU離脱後もEU単一市場に残る形となった北アイルランドでは、EUの規則によって7月から本土からソーセージなど冷蔵肉製品を入荷できないことに英側が反発しているためだ。「ソーセージ戦争」と称される同問題が解決しなければ、ぎくしゃくしている双方の関係が一層悪化するのは避けられない。

EUでは食品衛生の観点から、域外の第3国からソーセージ、ひき肉など冷蔵食肉製品を輸入することが禁じられている。英領北アイルランドは、EUと英国が締結した離脱協定で、北アイルランドと地続きで国境を接するEU加盟国アイルランドの間に物理的な国境を設けず、物流やヒトの往来が滞らないようにするため、事実上、EU単一市場に残った。このため、冷蔵食肉製品の輸出に関するEUのルールが適用され、英本土からは入荷できない。

双方の取り決めで、6月30日までは猶予期間として入荷が認められるが、7月1日以降は禁止される。

英政府は同国の食品衛生基準はEUと同レベルにあるとして、冷蔵肉製品を北アイルランドに出荷することに問題はないと主張。猶予期間終了後も出荷できるようにすることを要求している。しかし、EUとの協議は難航しており、ジョンソン首相は一方的な協定破棄または猶予期間の延長も辞さない構えを示していた。

英政府は17日、対立悪化を避けるため、猶予期間を9月30日まで延長することをEUに要請した。とりあえず出荷停止を回避し、問題解決に向けた協議の時間を稼ぐ意図がある。

EUの欧州委員会は同日、要請を検討すると表明した。ただ、英国は離脱協定を順守する必要があると念押しし、譲歩しない姿勢を示しており、今後の協議で事態を打開できる目途は立っていない。

英政府は3日、EU離脱に伴って北アイルランドで物流が混乱している問題に対応するため、北アイルランドのスーパーなどに英本土から入る食品などの複雑な通関・検疫手続きを免除する「猶予期間」を3月末から10月1日まで延長すると一方的に宣言した。これにEU側は猛反発し、法的手続きに入っている。「ソーセージ戦争」勃発で、双方は新たな火種を抱えたことになる。

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