ドイツのアンゲラ・メルケル首相は2日、英首相の別荘「チェッカーズ」で同国のボリス・ジョンソン首相と会談し、両国の共同閣議を年に1度、開催することで合意した。欧州連合(EU)を離脱した英国との関係を新たな基盤上で深化させていくことが狙い。友好条約ないし協調条約の締結も計画している。メルケル首相は英国との関係の新しい章が始まると発言。ジョンソン首相は、北アイルランドをめぐってEUとの関係は緊迫しているものの、ドイツとの関係を深めることは可能だと強調した。
EUと英国の離脱協定には、北アイルランドとアイルランドの紛争に終止符を打った1998年の和平合意に基づいて「北アイルランド議定書」が盛り込まれた。英国領の北アイルランドと地続きで国境を接するEU加盟国アイルランドの間に物理的な国境を設けず、英の離脱後も物流やヒトの往来が滞らないようにするためだが、これによって北アイルランドは事実上、EU単一市場と関税同盟に残ることになったため、英本土から北アイルランドに流入する物品については国内の移動であるにもかかわらずEUの規制が適用され、通関・検疫が必要となった。そのしわ寄せで、ひき肉など冷蔵食肉製品を英本土から北アイルランドにスムーズに出荷できなくなる恐れが出ている。EUはそうした事態を避けるための猶予期限をこれまでの6月末から9月末に延長したものの、英国との関係は冷え込んでいる。
ジョンソン首相は今回の会談で「(ドイツの)ドルトムントから(同じドイツの)デュッセルドルフに焼ソーセージを運ぶことができないという事態を想像してほしい」と発言。メルケル首相は、北アイルランド議定書の運用ではさらなる作業が必要だと一定の理解を示した。