モルドバ議会選、親EU政党が単独過半数を獲得

●大統領の目指す改革や親欧政策の前進に向けた大きな一歩に

●在外モルドバ人の86%がPASを支持

モルドバ共和国で11日、議会選挙(定数:101)が前倒しで行われ、マイヤ・サンドゥ大統領の率いる親欧州連合(EU)政党「行動と連帯(PAS)」が52.8%を得票し大勝した。モルドバで単独過半数を獲得したのはPASが初めて。大統領の目指す改革や親欧政策の前進に向けた大きな一歩と期待される。

2位はイゴリ・ドドン前大統領の親ロ派選挙連合「社会・共産連盟」で27.1%を得票した。国庫から10億ドル強が海外に不正送金された「大窃盗事件」で有罪判決を受けた実業家イラン・ショル氏のショル党は5.7%だった。

議席配分はPASが63議席、社会・共産連盟が32議席、ショル党が6議席。他党は議席獲得に必要な得票率に及ばなかった。投票率は48%にとどまった。

サンドゥ大統領は議会の解散総選挙を掲げて昨年11月の大統領選挙に勝利。今回の議会選挙を通じて、汚職にまみれる政治からの決別、司法の独立に向けた改革、EUとの関係緊密化を推進するために必要な議会の後ろ盾を得ることができた。

モルドバはこれまで、親欧派が国民の半分、親ロ派がもう半分を占め、その勢力争いが政治を特徴づけてきた。サンドゥ大統領は大統領選のときから親ロ派にも支持を求め、国民の分断の克服に務めてきた。厳しい入党条件を課すことなどで、現在までPAS関係者のスキャンダルは起きていない。

その姿勢が奏功したのか、今回の議会選挙では、大統領選の決選投票で過半数を得られなかった選挙区の多くでPASが勝利した。また、国外で投票した在外モルドバ人、21万2,000人のうち86%がPASを選んだ。

サンドゥ大統領とPASは、EUが今回の選挙結果を踏まえ、新型コロナ流行の影響から経済を復興させる試みや、国家機関の刷新でモルドバを支援することを期待している。

モルドバは2014年7月にEUと連携協定を結んだ。しかし、富豪が実質的に支配する「親EU」政権の「大窃盗事件」および選挙操作が発覚し、18年にEUからの財政支援が凍結された。同政権の退陣後も、透明性と法治国家の確立が支援の前提とされたため、PASは改革推進に必要な議席獲得に向けて今回の選挙を闘った。

「大窃盗事件」は、14年11月の議会選挙直前に不透明な融資契約を通じて国内3大銀行から総額10億ユーロが国外に流出した事件だ。15年4月に中央銀行の調べで発覚した。

国家予算の7分の1に当たる大金の着服ということで、国民の大規模な抗議運動につながった。3銀行は閉鎖処分、幾人かの関係者は懲役刑に処せられ、調査委員会も設置されたが、未だに事件の全容は明らかになっていない。

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