ドイツ連邦議会で最大勢力の与党キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)の支持率がにわかに低下している。CDUとCSUの共同首相候補であるアーミン・ラシェット氏(CDU党首)が洪水被災地の訪問時に大きな失態を演じ、市民の信頼を失ったことが原因だ。
公共放送ZDFが7月30日に発表した最新の有権者アンケート調査結果によると、CDU/CSUの支持率は28%となり、前回(16日)を2ポイント下回った。これまで支持率の低下が続いていた緑の党は1ポイント増の21%へと改善。与党の社会民主党(SPD)もオーラフ・ショルツ首相候補(財務相)が被災地支援をいち早く打ち出すなど迅速な対応を取った効果で1ポイント増の16%へと拡大した。CDU/CSUの失速は他のアンケート調査でも鮮明になっている。
ノルトライン・ヴェストファーレン州の首相でもあるラシェット氏はシュタインマイヤー大統領とともに州内の被災地を訪問した際に失態を犯した。市民に寄り添う演説を真顔で行う大統領の背後で、付き人と馬鹿笑いしている姿がテレビで生中継されてしまったのだ。ネット上での大きな批判を受けすぐに謝罪したものの、有権者は厳しい目を向けるようになった。
「3人の首相候補の中で誰が最も好ましいですか」という質問では、ラシェット氏との回答が29%となり、前回から8ポイントも低下した。ショルツ氏は6ポイント増の34%となり首位を獲得。緑の党のアンナレーナ・ベアボック首相候補(共同党首)も2ポイント増えて20%となった。「ラシェット氏は首相にふさわしくない」とみる有権者は59%で、「ふさわしい」(35%)を大きく上回っている。
CDU/CSUの危機感は大きい。CSUのマルクス・ゼーダー党首は週刊誌『シュピーゲル』のインタビューで、CDU/CSUが支持率でトップに立ったのは緑の党のベアボック首相候補が犯したオウンゴールによるとことが大きいと指摘。CDU/CSUは自らの手でポイントを稼いでいないとして、首相候補としてアピール力の弱いラシェット氏に輪郭を明確化するよう要求した。
ゼーダー氏はCDU/CSU首相候補の座をラシェット氏と争い敗れた経緯があり、ラシェット氏に対してはこれまでも圧力をかけてきた。可能性は低いとしながらも、緑の党がSPD、自由民主党(FDP)と連立政権を樹立し、CDU/CSUが下野に追い込まれることを恐れている。