インフラ事業の気候変動対策技術指針を欧州委が発表

欧州連合(EU)の欧州委員会は7月29日、EUが2021~27年に計画しているインフラ整備プロジェクトが洪水や熱波など気候変動の影響に対応できる要件を備えているかどうかを評価するための技術指針を発表した。同指針に基づく評価はEUから特定の資金を得るための条件となり、投資家はパリ協定や欧州気候法に適合すると判断されたプロジェクトについて、正確な情報に基づいて意思決定できるようになる。

7月中旬にドイツ西部などを襲った洪水のように、欧州でもこれまでにない規模の異常気象が発生している。気候変動によるEUの損害額はすでに年120億ユーロとされるが、世界の平均気温が工業化以前の水準と比べて3℃上昇した場合、損害額は少なくとも年1,700億ユーロに達すると試算されている。こうしたことからEU全体で気候変動の影響に対する脆弱性を最小限に抑える必要に迫られており、建設が予定されている鉄道や道路、発電所などプロジェクトを異常気象に対応できるようにすることが求められている。

今回の技術指針はプロジェクトの計画、開発、実行、モニタリングを通じて物理的な気候リスクを特定し、分析・管理するための共通の原則と手法を定めている。例えば海面上昇の影響を受ける可能性のある地域でのインフラ建設では、最新の科学的データに基づいてプロジェクトが直面する可能性のあるリスクを評価し、リスクが特定された場合はそれを軽減するための設計変更や、洪水に対する緊急対応システムの構築などが求められる。

また、各プロジェクトの影響評価では予想される温室効果ガスの排出量を計算し、50年までに域内の排出量を実質ゼロにするといったEUが掲げる気候変動に関連した目標に適合しているかどうかチェックする必要がある。プロジェクトが目標の達成を妨げる可能性がある場合は、見直しが求められる。

また、50年以降に寿命を迎えるインフラに関しては、設備などの運用や保守、撤去を気候変動に左右されない方法で行わなければならず、資材のリサイクルや再利用など、循環型経済への移行にも配慮する必要がある。

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