伊政府のアリタリア融資は「違法な国家補助」、後継会社ITAには返済義務なし

欧州委員会は10日、イタリア政府が伊アリタリア航空に対して2017年に実施した総額9億ユーロ(約1,170億円)の融資について、EUの国家補助規定に違反するとの調査結果をまとめ、同社に返済させるよう伊政府に命じた。一方、アリタリアの後継会社として設立されたITA(Italia Trasporto Aereo)に関しては、アリタリアが受けた補助金を返済する義務はないと結論づけた。

アリタリアは2001年の米同時テロ以降に経営が悪化し、近年は格安航空会社(LCC)や高速鉄道との競争で業績が低迷。17年3月に大規模な人員削減を柱とする経営再建策をまとめたが、従業員が反対して株主から追加出資を受けることができなくなったため、自主再建を断念。同年5月から政府の管理下で売却先を模索していた。

 伊政府はアリタリアが運航を継続するための資金として、17年5月に6億ユーロ、同年10月に3月に3億ユーロのつなぎ融資を実施した。欧州委は総額9億ユーロの融資について、返済期限の延長などを問題視し、18年4月から調査を進めていた。

EUの国家補助規定は特定の企業の救済を目的とする公的支援について、再建計画によって長期にわたる事業継続が可能で、市場競争が著しく阻害される恐れがないことなどを認可の条件としている。欧州委は伊政府からの資金支援によってアリタリアが「競合他社に対して不当な優位性を得た」と指摘し、同社への融資は違法な国家補助にあたると認定した。

一方、ITAは経営難で政府の管理下に置かれたアリタリアの後継として設立され、10月15日の運航開始を予定している。欧州委はITAが赤字路線を廃止して黒字路線に経営資源を集中し、使用する機体も当面は現在の半数以下に削減するなどの方針を示していることから、アリタリアと「経済的な継続性はない」と指摘。ITAにアリタリアが受けた違法な補助金の返済義務はないとの判断を示した。

欧州委はさらに、ITAが今後3年間に伊政府から受けることになっている総額13億5,000万ユーロの資本注入に関しては、市況に沿って実行される投資であり、事業計画も「実行可能と考えられる」と指摘。このため違法な補助金にはあたらないと結論づけた。

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