英下院が医療・介護強化のための増税案を可決、22年4月から国民保険料引き上げへ

英議会下院は8日、国民保険料の引き上げを柱とする増税案を賛成多数で可決した。今後3年間で約360億ポンド(約5兆4,000億円)の財源が確保される見通しで、新型コロナウイルス対策や高齢者介護など社会保障の強化に充てる。ただ、与党保守党は2019年の総選挙で国民保険料を引き上げないと公約しており、ジョンソン政権に対して公約違反との批判も出ている。

増税案はジョンソン首相が7日に発表した。22年4月から日本の社会保険料にあたる国民保険料を1.25%引き上げ、23年からは年金受給世代で一定の所得水準にある人からも同じ金額を徴収する。また、配当金に対する税率も1.25%引き上げる。

英政府は増税で確保される年間120億ポンドの財源を今後の新型コロナ対策や、コロナ対応の影響で治療や手術を後回しにされた患者の急増に直面する国民医療制度(NHS)の強化に充てる。また、財源不足で機能不全に陥っている公的介護も充実させ、生涯で支払う介護費用に上限を設ける方針だ。

ジョンソン政権は19年の総選挙で、所得税や付加価値税に加え、国民保険料も引き上げないと明言していた。このためジョンソン氏は7日、公約違反であることを認めたうえで「世界的なパンデミックは誰の公約にもなかった」と釈明。「財源確保に関する困難で責任ある決断をせずに、コロナ禍からの回復に向けて資金を投じることができると考えるのは間違っている」と強調した。

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