●カーシェアのデリモービルと不動産データのツィアンの大手2社
●それぞれ3億5,000万米ドル前後の調達を狙う
ロシアのカーシェアリング大手デリモービル(Delimobil)と不動産データベース大手ツィアン(Cian)が近く、米国で新規株式公開(IPO)を実施する計画だ。それぞれ3億5,000万米ドル前後の調達を狙う。ロシア企業の上場ラッシュを予測する市場の見通しに合致するもので、多くの企業が両社に続くと期待されている。
複数の金融市場筋の情報としてロイター通信が7日報じたところによると、デリモービルはこの秋にもニューヨーク証券取引所で上場し、3億5,000万ドルを調達したい意向だ。モスクワ証取でもIPOを実施する方針という。幹事業務の委託先としては、バンク・オブ・アメリカ、シティ、USB、ズベルバンクCIB、VTBキャピタル、ルネッサンス・キャピタルなどの名が挙がっている。
デリモービルは1万6,000台強の自動車を運営し、ヤンデックス・ドライブなどと並ぶロシアのカーシェアリング大手の一つだ。2019年に初めてIPO計画を公表した際には株式40%を売却するとしていたが、今回の市場筋の情報では具体的な売出し規模が明らかになっていない。ロシア金融大手VTBが今年、同社株13.4%を取得した際の取引額は7,500万ドルだった。
一方、不動産物件情報サイト大手のツィアンは「近く」上場する見通しで、上場先としてはナスダックが有力視されている。調達規模は3億~4億ドルになるもようだ。すでに先月の時点で幹事証券会社を選んでいる。
このほか、米国上場を目指すロシア企業は、食品販売のフクースビル(VkusVill)、サンクトペテルブルク証取など4社あるという。米『ウォールストリート・ジャーナル』紙は、フクースビルの企業価値を30億~50億ドル、サンクトペテルブルク証取を20億ドルと推定する。
また、食品大手プロディメクスもIPOを検討中で、5億~7億5,000万ドルの調達を希望しているという。
2014年のクリミア半島編入を機に欧米が発動した対ロシア制裁のため、ロシア企業は長期にわたり国際市場におけるIPOを見送ってきた。しかし、昨年11月、電子商取引(IC)大手のオゾンがナスダックに上場して12億ドルを調達したことが追い風となり、IPOへの動きが活発化している。UBSは今年3月の時点で、今年のロシア企業によるIPO調達総額が100億ドルを超えると予測している。