航空大手の独ルフトハンザは19日、総額21億ユーロの増資を実施すると発表した。既存の株主から資金を調達して財務を強化するとともに、国の支援の返済に充てる意向だ。同社は国の支援を早期に脱却に経営の自由を取り戻すことを目指している。
ルフトハンザはコロナ禍で経営が急速に悪化した昨春、政府と交渉し総額90億ユーロの支援を取り付けた。具体的には◇政策金融機関のドイツ復興金融公庫(KfW)が民間銀行と共同で30億ユーロの協調融資を行う◇国の経済安定化基金(WSF)が決議権のない出資を最大57億ユーロ実施するほか、第三者割当増資も引き受けて株式20%を1株当たり2.56ユーロ、総額およそ3億ユーロで取得する――を取り決めた。
決議権のない出資を通してはWSFから総額25億ユーロの資金を確保した。今回の増資で得る資金のうち15億ユーロをその返済に充てる。残り10億ユーロについても年内に返済し、国による決議権のない出資をゼロに引き下げる考えだ。
WSFは8月中旬、ルフトハンザの保有株を一部売却し、出資比率を最大5%引き下げる方針を表明した。すでに当初の20%から15.94%まで低下している。
WSFは今回の株主割り当て増資を引き受け、出資比率を15%程度に保つとみられている。ただ、ルフトハンザが決議権のない出資を全額、返済した後に、株価がWSFの昨年の取得価格(2.56ユーロ)を超えた場合、WSFは全保有株を時価で売却しなければならないことから、同基金の持ち株比率は中期的にゼロになる見通しだ。KfWから受けた融資はすでに返済した。
ルフトハンザは国の支援を受けていることから現在、ボーナス支給を禁じられているほか、他社の買収も制限されている。