ロシア下院選挙、プーチン大統領の「統一ロシア」が勝利

●定数の3分の2議席を獲得、プーチン大統領の政権基盤維持

●与党の得票率は前回(16年)から4.4ポイント減

ロシアで17日から19日にかけて行われた下院(ドゥ―マ)選挙(定数:450)は、与党・統一ロシアが定数の3分の2議席を獲得する見通しとなり、プーチン大統領の政権基盤維持が確実となった。ただ、16年の前回選挙に比べると得票率を減らした。実質所得の低下に物価上昇が重なり、生活に困窮した人が野党に投票したためとみられている。一方、選挙活動が制限されたり、不正投票が多く報告されるなど、今回も自由・公正な選挙とは成らなかった。

中央選挙管理委員会が開票率98.2%の時点で発表した得票率は、与党・統一ロシアが49.8%で、前回に比べて4.4ポイント低下した。2位は共産党で、5.7ポイント増の19.0%へ伸ばした。極右の自由民主党(LDPR)は7.5%(前回:13.1%)、中道左派の公正ロシアは7.4%(6.2%)。新党「新しい人々」は5.4%と、阻止条項をクリアして議席を獲得する可能性がある。

小選挙区でも、225ある選挙区のうち199選挙区で統一ロシアがリードしている。このため、統一ロシアが議席を減らしつつも、下院の全議席の3分の2を再び確保する見通しだ。

一方、選挙の運営について様々な問題があるのもこれまで同様となっている。まず、立候補受付の時点で政府にとって危険とみなされた人物は除外された。最も大きな例は、現在懲役刑に服している反政府運動指導者アレクセイ・ナヴァルニ氏の盟友だ。反体制派の有権者が投票を阻まれた例もあるという。

1993年以来、ロシアへ選挙監視団を派遣していた欧州安全保障協力機構(OSCE)は今回、派遣を見送った。ロシアがパンデミックを理由に監視員の受け入れ枠を60人に制限したためだ。OSCEは決定の根拠として、◇人員上限の理由について合理的な説明が得られなかった◇任務遂行には長期監視員80人、短期監視員420人が必要で、60人では不十分――を挙げている。

国内の選挙監視団体ゴロスは「好ましからなる外国組織」として当局から投票所への立ち入りを禁止された。それでも、一般市民から◇未封印の投票箱にあらかじめ記入された投票用紙が大量に押し込まれた◇多重投票◇公務員への与党投票強要――など4,000件以上の違法行為の通報を受けたという。オンライン投票結果が予告に反して発表されなかったことも疑惑を深めている。

■反政府陣営の「スマート投票」作戦は当局により妨害

なお、ナヴァルニ陣営が与党候補打倒を目指して立ち上げたアプリおよびホームページ「スマート投票」は、投票直前になって当局の圧力により配布・アクセス禁止となった。「スマート投票」は、野党が自ら統一候補を立てられない現状を踏まえたうえで、「とにかく統一ロシアの議員を減らす」目的で作られた。ユーザーの住所をもとに、該当する小選挙区で最も有望な野党候補をはじき出す。有権者がそれに沿って投票することで、反与党の票を束ね、野党の議席を増やそうという意図があった。

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