欧州議会の代表団が3~5日に台湾を公式訪問し、蔡英文総統ら政権幹部と会談した。台湾への統一圧力を強めている中国を念頭に、代表団は自由や民主主義といった価値観を共有する台湾に寄り添い、今後も交流を継続して欧州連合(EU)と台湾の関係強化を図る方針を表明した。
欧州議会が公式に代表団を台湾に派遣したのは今回が初めて。代表団は、EUと加盟国に対する第三国からの選挙介入や世論操作などの問題を扱う特別委員会のメンバー7人で構成され、対中強硬派として知られるフランス選出のラファエル・グリュックスマン議員が団長を務めた。EUは今年3月、新疆ウイグル自治区での人権侵害を理由に中国当局者らに対する制裁を発動。これを受けて中国がEU側に報復制裁を科し、グリュックスマン氏を含む5人の欧州議会議員も制裁対象となっている。
代表団は3日に蘇貞昌・行政院長(首相に相当)と会談し、サイバー攻撃や偽情報への対処について意見交換した。蘇氏は「台湾は中国と海峡を隔てた自由と民主主義の第一線にあり、圧力を受け続けているが、偽情報への対応については経験を蓄積している」と発言。グリュックスマン氏は「EUも外国勢力からの干渉に直面しており、台湾の貴重な経験から学んで偽情報への対策を強化したい」と応じた。
続いて4日には蔡氏と会談し、EUと台湾の協力関係を深めることで一致した。グリュックスマン氏は「台湾は孤立していない。欧州は自由と法による支配、人間の尊厳を守るため、台湾とともに立ち上がる」とコメント。さらに「台湾は中国から圧力と攻撃を受けながら、民主主義を守り抜いてきた。欧州も民主主義の弱体化を狙う国家からの攻勢に直面しており、台湾から学ぶ点が多い」と述べた。
これに対し、蔡氏は「欧州議会の公式訪問は大変意義深い」と歓迎の意を表明。「台湾は多くの課題に直面しており、より多くのパートナーと連携を深めたいと考えている」と語った。
欧州委員会は9月に「インド太平洋地域における協力に関する戦略」と題する政策文書をまとめ、東南アジア諸国連合(ASEAN)や台湾などとの関係を強化して、経済面で中国に依存する現状からの脱却を図る方針を打ち出した。欧州議会も10月、台湾との政治的な関係強化を求める文書を賛成多数で採択。台湾からも10月末に呉釗燮・外交部長(外相に相当)が欧州を訪問し、欧州議会の議員と会談するなど、EUと台湾はこのところ急速に距離を縮めている。
一方、中国は台湾が欧米などに接近する動きに反発を強めている。中国で台湾政策を担当する国務院台湾事務弁公室は5日、台湾の行政院長、外交部長、立法院長(国会議長に相当)の3人に対し、中国訪問を禁止するなどの制裁措置を取ると発表した。「頑迷な台湾独立分子」が中国と台湾の対立をあおり、「外部勢力と結託して国を分裂させようとした」などと非難している。