ポーランドで農業の最新技術利用に関心高まる、アグリテック企業も活躍

●若手の農業従事者が最新技術の活用に積極的

●アグリテック企業は化学肥料に代わる有効成分分野に注目

ポーランドの農家が最新技術の利用に積極的な姿勢を見せている。同国のクラクフ農業大学がこのほど行った調査によると、肥料の利用効率化に関心を示す農家が全体の70%以上を占めたほか、農機の自動運転や機器の遠隔(テレマティクス)操作、またはデジタル技術を使ったデータ収集など土壌改良の支援システムに関心を持つ者がそれぞれ約50%と高い割合を示している。そうした農家の姿勢を背景として、農業分野のスタートアップ、いわゆる「アグリテック」企業が登場しており、新しい技術が実際に現場で活用され始めている。

■独自技術で活躍するアグリテック企業

スタートアップの振興を目的とする非政府組織「スタートアップ・ポーランド」の調査によると、農業におけるデジタル技術の活用で最も関心が大きいのはテレマティクスで、全体の74%を占めた。次いで生産過程の記録、および電子商取引(EC)プラットフォームでのオンライン販売がそれぞれ68%と高い割合を示し、生産性の向上がそれに続いた。特に若手の農業従事者が最新技術の活用に積極的だった。

スタートアップ・ポーランドのスナジク会長は、同国のアグリテック企業が注目するのは化学品に代わる有効成分に関する分野だとし、例として「アートアグロ(ArtAgro)」のハイドロゲル(親水性高分子ゲル)を挙げた。ハイドロゲルは粒径が小さくゲル構造を持つナノ粒子(ナノゲル)を農業分野で活用するもので、内部に水と肥料を保持することで農作物がそこから養分を吸収できるようになっており、作物の屋内栽培などで活用されている。また「サーモアイ(ThermoEye)」は牧畜農家向けに牛の病気の兆候を早期に発見するシステムを開発したほか、「トレースオン(TraceON)」の構築したトレーサビリティ(追跡可能)システムでは、生産農家から最終消費者にいたるまで農産品の流れをたどることができ、動植物の生産地などの情報を入手することが可能だ。デジタル技術は食品の生産以外にも環境保護の促進に有用だとの見方もある。

■垂直農法を導入した都市農業にも期待

近年注目を集める都市農業では新しい技術の果たす役割はさらに大きく、従来の農地に比べ水や農薬の使用量の大幅な低減が可能だと期待されている。ワルシャワにある同国最初の都市型農場「リストニ・ツド」は、建物内の縦の空間を「農場」として利用する垂直農法を導入し、高層建築物の中で農作物の栽培を実現しており、水の使用量を90%削減するなど成果を上げている。施設内に販売スペースを設け生産と販売が一体化しているのも特徴だ。垂直農法ソリューション企業「ベルティゴ(Vertigo)」のシステムを使い、作物に養分を送る際の条件管理を行っており、農産物以外にも自然化粧品や医薬品、機能性食品などに応用できる環境を実現している。

農業分野のデジタル革命は「農業4.0」として注目されている。例えば人工衛星を使った播種の監視や収穫予測が可能なほか、雑草や病害虫の発生を抑制できる可能性がある。またドローンの果たす役割も大きい。土壌の状態を正確に分析したり、目的に応じた費用対効果の高い土壌管理を行うことができるほか、作物を監視し被害を把握することが容易になると期待される。

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