英清算機関の域内顧客向け業務、EUが22年7月以降も容認

欧州委員会は10日、英国に拠点を置く中央清算機関(CCP)がEU域内の顧客向けのデリバティブ取引決済業務を2022年7月以降も継続することを認める意向を表明した。英国のEU離脱に伴い、22年6月末に禁止する予定だったが、EU側の準備が間に合わない恐れがあることから期限延長に踏み切る。

欧州ではロンドン証券取引所(LSE)グループのLCHがユーロ建てデリバティブ取引の中央清算機関として圧倒的なシェアを握っている。EUは英国の離脱により、同国のCCPがEU規制の対象外となり、域内の銀行などがデリバティブ取引の決済を英に過度に依存するのはリスクがあると判断。同取引の清算を域内の機関に一元化することを決めた。

ただ、欧州委は20年6月、英のEU完全離脱(21年1月)と同時に域内の顧客が英の清算機関を利用できなくなると、デリバティブ取引の決済処理が混乱するとして、22年6月末までは英のCCPがEU市場にアクセスすることを認めると発表していた。

EUは域内の清算機関が能力を拡充し、英のCCPが担ってきた業務を遂行できるようになることを目指しているが、まだ準備が整わず、域内の銀行などから混乱を避けるため期限を延長するよう要請を受けたことから、22年7月以降も英のCCPに域内顧客向けのデリバティブ取引決済業務を継続することを認める。欧州委のマクギネス委員(金融サービス・金融安定・資本市場同盟担当)によると、22年初めに正式発表する。新たな期限は未定。

EUがユーロ建てデリバティブ取引の清算を英から引き継ぐには、域内の中央清算機関の能力を増強し、監督体制も見直す必要がある。これらの目途が立つまで、英のCCPによる同業務の継続を認める方針だ。

EU筋が英フィナンシャル・タイムズに明らかにしたところによると、英離脱後の北アイルランドの通商ルールをめぐって英政府と激しく対立しているEUが、英のCCPを予定通り締め出すと双方の関係悪化に追い打ちをかけ、英側の態度がさらに硬化することを懸念したことも今回の動きの背景にあるという。

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