英が中銀デジタル通貨導入を正式検討へ、発行開始は「最短で20年代後半」

英財務省と中銀のイングランド銀行は9日、中央銀行デジタル通貨(CBDC)の導入を進めるかどうかについて、2022年に正式な検討に入ると発表した。意見募集を実施して法定デジタル通貨を発行する必要性やリスク、金融セクターへの影響などを多角的に検証し、導入の是非を判断する。導入する場合、発行開始は「最短で20年代後半」との見通しを示している。

英政府とイングランド銀は21年4月、CBDCの発行可能性を追求する共同タスクフォースを立ち上げた。CBDCを現金や銀行預金に取って代わるものではなく、「共存するもの」と位置付け、導入の目的や活用事例、リスク、設計や運用上の課題などについて検討を進めている。

財務相と中銀は声明で、「CBDCを英国で発行するかどうかはまだ決定していないが、大規模な国家的インフラプロジェクトになる」と指摘。現在の調査段階から開発段階に進んだ場合、そのプロセスは数年かかり、発行開始は最も早くて26年以降になるとの見通しを示した。

グレン金融サービス担当相は「一般消費者や企業が安全に利用できる決済手段としてリテールCBDCの可能性を探っている。英国が金融サービス分野における技術革新の最前線に立ち続けるのに貢献するだろう」と述べた。

デジタル通貨は低コストで国境を越えた決済を円滑にする一方、金融システムの不安定化や、マネーロンダリング(資金洗浄)やサイバー犯罪などに悪用される可能性などが懸念されている。新型コロナ危機で現金離れに拍車がかかるなか、世界各国でCBDCの開発や研究が進められており、中国や日本など10カ国以上で実証実験が進行中。欧州中央銀行(ECB)も7月、デジタルユーロの発行に向けて本格的な準備を開始した。

上部へスクロール