第三国による「経済的威圧」に対抗、中国など念頭に欧州委が提案

欧州連合(EU)の欧州委員会は8日、EUに対する第三国からの「経済的威圧」に対抗するための新たな制度の導入を提案した。EUや加盟国に経済的な圧力をかけて政策変更を迫る域外国に対し、欧州委の権限で追加関税や域内市場へのアクセス制限などの対抗策を講じられるようにする。新制度の導入には欧州議会と加盟国の承認が必要。一部の加盟国は欧州委が大きな権限を握ることに警戒感を示しており、合意形成には時間がかかる可能性がある。

欧州委が策定した制度案は中国などを念頭に、貿易や投資などの経済的手段を利用して、外交や気候変動などの分野でEUや加盟国に政策を変更させようとする第三国の動きを阻止するのが狙い。第三国による輸入制限などの措置が経済的威圧に当たると欧州委が判断した場合、まずは交渉を通じて当該国に是正を求めたうえで、改善されなければ「最後の手段」として追加関税を課したり、投資、知的財産権、公共調達、資本市場へのアクセスを制限できる仕組みを整える。

欧州委のドムブロフスキス上級副委員長(通商政策担当)は声明で、「地政学的緊張が高まるなかで貿易が武器として利用され、EUと加盟国は経済的な威嚇の標的になっている。われわれはこうした脅威に対抗する手段を必要としている。第三国による経済的威圧を抑止する新制度を導入することで、EUは今後数十年にわたる地政学的な課題に対応し、強さと機敏さを維持できる」と強調した。

EU加盟国に対する経済的威圧としては、台湾との関係を深めるリトアニアへの中国の対応が該当するとみられる。中国はリトアニアが台湾に事実上の大使館の開設を認めたことに反発し、リトアニアからの輸入に制限をかけているとされる。ボレル外交安全保障上級代表とドムブロフスキス氏は8日、連名で声明を発表し、「リトアニアからの積み荷が中国の税関で止められているとの情報を受けた。EUは加盟国へのあらゆる政治的圧力や威圧的措置に対抗する用意がある」と表明した。

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