豪資源大手のリオ・ティントは18日、セルビアにおけるリチウムの生産開始が2027
年に遅れる見通しを明らかにした。許認可手続きが長引いていることや、環境保護
の観点から激しい反対運動が起きているためで、従来の計画通り26年に商業生産を
始めるのは難しいと判断した。セルビア政府はこれまでに、プロジェクトを継続す
るかどうかの判断を4月の大統領・議会選挙後へ持ち越す方針を公にしている。
リチウム鉱床のあるセルビア西部のヤダル渓谷では、環境保護活動家や住民が道路
封鎖を含む激しい抗議活動を展開してきた。これを受けて地元のロズニツァ市当局
は先月、リオ・ティントへの地所割り当て計画を撤回した。プロジェクト推進に協
力してきたセルビア政府も、判断保留に追い込まれた形だ。
ヤダル渓谷には欧州最大級のリチウム鉱床があり、リオ・ティントが24億米ドルを
投じて開発に乗り出した。リオ・ティントの従来計画では、商業生産開始から2〜3
年後には年5万8,000トンの炭酸リチウムを出荷し、電動乗用車100万台分のバッテ
リー需要を満たせる見通しだった。
セルビアの一人当たり国内総生産(GDP)は西欧の約3分の1に過ぎないが、政府は
リチウム生産からEV生産までのサプライチェーンを国内に構築することで年間100
億ユーロ強の投資を呼び込むことも可能とみている。これはGDPの22%に相当す
る。
政府リポートは、世界最大手の電動車用バッテリーメーカーである中国寧徳時代新
能源科技(CATL)や、独ファルタ、スロバキアのイノバット、また、独フォルクス
ワーゲン(VW)などの自動車メーカーを誘致できる可能性に言及している。ただ、
各社はまだ立地を決定する段階になく、「捕らぬ狸の皮算用」とみる向きもある。