ウクライナ、デジタル産業の振興に注力

●同国は仮想的なデジタルハブ施策「ディヤ・シティ」を推進

●同ハブの「入居」企業には様々な優遇措置を適用

ウクライナのゼレンスキー大統領はこのほどキエフで開催されたデジタルサミット「ディヤ・サミット(Diia Summit)」に出席し、同国のデジタル化を今後さらに進めていく方針を明らかにした。同大統領は3年前の就任時に立ち上げたデジタル化構想について、これまでに行政サービスの多くがデジタル化されたと述べた。同国は「ディヤ・シティ」と呼ばれる仮想的なデジタルハブを通じ、テクノロジー企業の優遇措置を導入している。

サミットの開催は今回で3回目。ディヤ・シティでは、法的な手続きや税制、雇用に関する優遇措置を通してスタートアップの振興や優秀な外国人技術者の受け入れを進めている。

ゼレンスキー大統領は「ディヤ・シティ」の施策により、テクノロジー関連産業の経済規模が2025年に1,650億ドル、国内総生産(GDP)比で現在の4%から10%に拡大すると述べた。同大統領はまた、経済の土台となる最も重要なものは人的資源だと述べ、有能な人材が国外に流出するのを防ぎ、キエフをはじめとするテクノロジーハブに海外の優秀な人材を呼び寄せるような環境を整備する意向を示した。大統領は「ディヤ・シティ」の優遇措置は世界で最良のものだと強調している。

サミットでは「ディヤ・シティ」の立案者の1人、フョードロフ・デジタル変革相も講演を行い、教育システムをテクノロジー産業のニーズに合わせたものに変えていく計画を示した。具体的には、学校のカリキュラムに起業に関する授業を取り入れることを予定している。同相はまた、デジタル変革省の職員の約70%は民間ビジネスの経験を持つことから、スタートアップに対し適切に助言することができると述べた。その他、スタートアップを支援する国家ファンドを立ち上げ、返済不要の助成金を支給する方針だ。

ディヤ・シティに「入居」した企業には様々な優遇措置が適用される。所得税の税率は18%、個人所得税は5%など各種の税率が抑えられているほか、フリーランスの社会保険料も負担される。その他に知的財産権の保護や、個人及び財産に対する治安当局者の不法な介入からの保護措置が導入されているのが特長だ。

ロシアは現在、ウクライナの国境付近に軍を終結させており、一部では両国の武力衝突の発生が懸念されている。これに関しゼレンスキー大統領は、同国は今後もビジネスに対しオープンな姿勢を崩さないと述べた。

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