イスラエル、政府主導で量子コンピューター開発へ

●約5,500万ユーロを投じ、国防やイノベーション機関が協力する

●開発目標の量子コンピューターの規模は明らかになっていない

イスラエル政府は14日、量子コンピューターの開発に2億シェケル(約5,500万ユーロ)を投じる計画を明らかにした。政府は量子コンピューターが安全保障や経済、テクノロジー、工学、科学といった分野で将来的に欠かせないインフラになるとみており、国防省研究開発局とイスラエル・イノベーション機構(Israeli Innovation Authority)がそれぞれ分担して関連技術の開発を進めていく予定だ。

計画では、イノベーション機構が量子コンピューターに関する環境整備とアプリケーションを確立するための即効性のある施策を担当し、テストの実施や実地での応用を迅速に行っていく。それに対し国防省は長期的な施策を担当し、研究者や防衛産業の専門家と協力して本格的な量子コンピューターの開発に取り組む方針だ。

同国ではすでに量子コミュニケーションや量子センサーなどコンピューター以外の量子技術の開発に多くの投資がなされてきた。防衛産業大手ラファエル(Rafael)は国防省およびイスラエル国防軍(IDF)と共同で量子センサーの開発を進めている。

量子コンピューターの開発は米国と中国がリードしている。検索エンジン大手の米グーグルは2019年に量子コンピューターを使った演算に初めて成功しており、29年までには量子によるスーパーコンピューターを製作する計画だ。一方、米ionQなどは小型の量子コンピューターモデルを開発しており、中規模の量子コンピューターが今後数年内に金融業界で利用されるようになると予想している。イスラエル政府の開発目標が小型のものなのか、大型の本格的なものなのかははっきりしていない。

量子コンピューターは従来の古典コンピューターがゼロと1で情報を表現するのに対し、両者の重ね合わせ状態を利用する量子効果により両方を同時に表現することができる。そのため処理能力が指数関数的に向上するとされている。(1ILS=35.82JPY)

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