しつけと体罰~チェコ

チェコの教師ズデニカ・シープ・スタニコヴァーさんがクリスマスにインスタグラムで子どもを持つ人に「子どもの頃の思い出」を募集した。休暇の時期にリラックスするきっかけになればという思いからだったが、その結果は全く違う方向へ行ってしまった。「親から体罰を受けた」思い出をつづった手紙が100通以上届いたのだ。

話が大きくなったのは、マリアン・ユレチュカ労働社会相が絡んでからだ。スタニコヴァーさんは、小児心理療法士のヤナ・ノヴァ―チュコヴァーさんらと3人で、インスタに同相への公開書簡を掲載し、体罰禁止を法制化するよう求めた。しかし、ユレチュカ労働社会相は、「親が子育てに体罰を用いることを禁じるつもりはない。自分も親にたたかれたが、今ではそれに感謝している」と拒否したのだ。

欧州連合(EU)加盟国の多くは体罰を法律で禁止しており、チェコはまだ禁止していない4カ国のうちの1つだ。しつけの一環として体罰が必要と考える人は未だに多い。ニールセン・アドモスフィアが2018年に実施した世論調査では、「子どもに体罰を与える・与えたことがある」人は63%に上った。きっかけとして多いのは親・祖父母に従わない、嘘をついたなど、子育てをしていればよくある状況だ。また、「親には子育てで体罰を与える権利がある」と考える人は57%で、「禁止すべき」の7%を圧倒的に上回った。

しかし、チェコの世論も変わりつつある。公開書簡には、すでに3,000人近くが賛同した。ノヴァ―チュコヴァーさんは「どんな形をとるにせよ、暴力は当事者だけでなく社会全体に害を与える」と話す。「数多い長期研究の結果をみると、体罰を受けた子どもたちは、それが大人から見て『小さい』ものだったとしても屈辱を感じ、後々まで心に傷を負うことになる」とし、今回の議論が親(大人)の意識の変化につながれば、と願っている。

上部へスクロール