オーストリアのグラーツ工科大学が独半導体大手のインフィニオンと協力して実施する自動車用レーダーセンサーのAIシステムを開発する研究プロジェクト。他のレーダーセンサーが発する干渉信号をフィルターで除去し、物体の検出を大幅に改善する自動車用レーダーセンサーのAIモデルを開発している。
自動車の運転支援システムや安全システムが機能するためには、カメラやライダー、超音波、レーダーなどのセンサーが必要になる。このうち、レーダーセンサーは、周辺物体の位置および速度に関する情報を提供するが、他のレーダーセンサーが引き起こす干渉信号や天候条件によるノイズがセンサーの測定精度を低下させる問題がある。
グラーツ工科大学とインフィニオンが開発中のAIモデルは、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を基盤とするもので、フィルター性能が高く、エネルギー消費量が少ない高効率の特徴を持つ。
ノイズ削減の性能(テストの精度を示すF1スコア)は89%と高い。また、ビット幅が8ビットのモデルで、ビット幅が32ビットのモデルと同等の性能を確保しており、保存スペースは218キロバイトと、従来に比べ75%削減した。
研究プロジェクト「REPAIR」では、これまでの開発成果をさらに最適化していく。堅牢度を高め、悪天候などの環境の影響に対する強度も高めていく。入力信号が学習したパターンと大幅に異なる場合にも正確に物体を認識できるように性能をさらに改善していく。
「REPAIR」の実施期間は3年。研究チームは、当該システムを実際の車両に搭載するまでには今後さらに数年かかる見通しを示している。