イスラエル、国内初の量子コンピュータ開発に成功

●能力は5量子ビットと小さいが、ノイズ耐性の高い技術を採用

●より高性能な64量子ビット機は1~2年後に実現する見通し

イスラエルのワイツマン科学研究所は22日、同国初となる量子コンピュータを開発したと発表した。能力は5量子ビット(qubit)と比較的小さいが、ノイズ耐性の高いイオントラップ技術を採用した。理論の詳細は、米国物理学会(APS)が発行する『PRXカンタム』誌(3月22日号)に掲載された。ワイツマン研究所ではすでに、より高性能な64量子ビット機の開発にも取り組んでおり、1~2年後に実現する見通しだ。

イオントラップ型量子コンピュータは、量子情報の基本単位である量子ビットの基礎を形成するイオンを、電場と磁場を組み合わせて小さいスペースに閉じ込める。従来のコンピュータが「0か1か」の二進法で演算処理していたのに対し、量子ビットは「0と1」を重ね合わせた形で表現できるため、並列処理できるようになり、演算速度が格段に速くなる。

量子コンピュータはこれまで世界で30台ほどしか作られておらず、イオントラップ型に限ると10台にも届かない。ワイツマン研究所のコンピュータは5量子ビットで、IBMが昨年、量子計算のクラウドサービスを開始した時点の技術と同等だ。

また、開発中の64量子ビット機と同レベルの計算機はこれまでのところ、グーグルと中国科学技術大学の作った2例に限られている。

量子コンピュータは、最適な組み合わせを見つけ出す能力に長ける。サイバーセキュリティや材料研究、製薬、金融などへの応用が期待され、グーグルやマイクロソフト、IBM、インテルなどの大手が実用化を競っている。また、中国、米国、ドイツ、インド、日本など政府レベルで独自技術開発に投資している国もある。

インドの調査会社クインス・マーケット・インサイトが昨年8月発表したリポートによると、世界の量子コンピューティング市場規模は今年の推定4億8,740万米ドルから30年までに37億ドルに拡大すると見込まれる。

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