ドイツ経済・気候省は4日、露国営天然ガス大手ガスプロムの独子会社ガスプロム・ゲルマニアを信託管理下に置いたと発表した。ガスプロムが同子会社を無許可で売却していたことが判明したためで、エネルギーの安定供給を確保するためにガスプロム・ゲルマニアの管理を独連邦ネットワーク庁に委託した。ハーベック経済・気候相は、国内のエネルギーインフラをロシア政府の恣意的な決定から守るための措置だと説明した。
ガスプロムは3月31日、ガスプロム・ゲルマニアの清算方針を明らかにした。これを受け、経済・気候省が調べたところ、ガスプロム・ゲルマニアをロシア企業のJSCパルマリーとガスプロム・エクスポート・ビジネス・サービシズ(GPEBS)を通して何者かが違法に買収していたことが判明。同省はガスプロム・ゲルマニアの信託管理を決定した。
ドイツではエネルギーなど重要インフラ分野の企業を欧州連合(EU)および欧州自由貿易連合(EFTA)域外の企業が買収する場合、経済・気候省に計画を伝え承認を得なければならないことが、貿易法で定められている。ガスプロム・ゲルマニアの売却はこの手続きなしに行われたことから違法となる。売却先はすでに、ガスプロム・ゲルマニアの清算手続きを開始するよう指示を出していたという。
ガスプロム・ゲルマニアはドイツ北部のレーデンに同国最大のガス貯蔵施設を持っている。レーデンの貯蔵施設が仮になくなると、ロシアのウクライナ侵攻に伴う天然ガス供給の不安定化が一段と進む懸念があることから、経済・気候省は売却手続きを無効としたうえで、連邦ネットワーク庁の管理下に置いた。
この措置により、ガスプロム・ゲルマニアの出資者は決議権を行使できなくなった。連邦ネットワーク庁は役員の解任・任命権、経営の指示権を持つ。会社の資産を処分する際は同庁の承認を得なければならない。
経済・気候省は最悪の場合、ガスプロムと露国営石油大手ロスネフチの独子会社を国有化することを以前から検討している。ロスネフチはベルリンとブランデンブルク州に石油製品を供給する製油所(PCKラフィネリー)の過半数資本を持つことから、同製油所での精製を意図的に減らしたり停止する懸念がある。
ただ、国有化は法的なリスクを伴うことから、連立与党の自由民主党(FDP)は懐疑的だ。ハーベック氏(緑の党)もガスプロム・ゲルマニアの信託管理期間終了後、同社を国有化するかどうかについて明言を控えている。