天然ガスパイプライン運営のオープン・グリッド・ヨーロッパ(OGE)は8日、独北部のヴィルヘルムスハーフェン港を起点とするパイプラインを敷設し、年内に完成させる計画を発表した。同港に設置予定の浮体式LNG貯蔵・再ガス化設備(FSRU)を既存のパイプライン網と接続し、国内の安定供給を図る意向だ。プロジェクトを短期間で実現するためには政策当事者や当局との緊密な連携が必要だとして、協力を呼びかけている。
ドイツ北部を東西に走るNETRAパイプラインの終点に当たるエッツェルとヴィルヘルムスハーフェン港を結ぶ区間に新たなパイプラインを敷設する。距離は30キロメートル弱。直径は約1メートルで年100億立法メートルのガスを輸送できる。輸送能力は将来的に最大280億立方メートルへと拡大する。水素輸送への転用を視野に入れている。
ドイツ政府はロシアのウクライナ侵攻を受けてロシア産天然ガスへの依存を中期的に脱却する方針を打ち出した。これを実現するため、これまで同国になかったLNG(液化天然ガス)ターミナルを設置し、ガス輸入の多様化を図る意向だ。
ロシアからのガス供給量はこれまで年500億立方メートルを超えていた。ヴィルヘルムスハーフェン港に設置するFSRUは1隻で約90億ユーロの天然ガスを取り扱える。これはロシアからの調達量の20%弱に相当する量だ。ドイツではブルンスビュッテル港とシュターデ港でもLNG貯蔵・再ガス化施設の建設が計画されており、同国のガス輸入に占めるロシア産の割合は今後数年で、昨年の55%から大幅に低下する見通し。