スマートセンサーで副反応を計測、新ワクチンの臨床試験に活用

●被験者の主観に頼らず正確なデータを収集できる

●確率が極めて低い有害事象を発症前に発見できる可能性

イスラエル・テルアビブ大学の研究チームが、スマートセンサーの活用で新ワクチンの臨床試験結果を客観化できることを発見した。これまでは被験者の主観に頼ってきたが、ウェアラブルセンサーで生理反応を測ることでより正確なデータが集められるという。結果は『ネイチャー』グループの医療雑誌『コミュニケーションズ・メディスン』に発表された。

今回の実験は、イスラエルで新型コロナワクチンの第2回接種が広く行われていた時期に、18歳以上の160人の協力を得て実施された。対象はビオンテック/ファイザーのmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン。センサーはイスラエルのヘルステック企業バイオビートが開発し、米食品医薬品局(FDA)の承認を得ているウェラブルセンサーを用いた。

センサーはワクチン接種の1日前から3日後まで被験者の胸に取り付けられた。心拍数、呼吸数、血中酸素濃度、心拍出量、一回拍出量、末梢血管抵抗、血圧、体表温など、13項目のデータを継続的に監視した。

ここで得られたデータと、被験者の報告を比較したところ、何らの副反応もなかったという被験者でさえ、生理的に大きな変化が認められた。また、副反応は接種後48時間に増え、これを過ぎると減ることも観察された。

第一著者のイフタク・ゲプナー氏は、今回の実験で、被験者の報告に頼る必要がないことが証明されたと話す。また、生理反応のデータを分析することで、有害事象が起こる前にその危険を察知できることも分かったという。これが正しければ、新型コロナワクチンの接種における心筋炎など、確率が極めて低い(1万分の1)有害事象が発症前に発見できることになる。

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