独が再生エネ普及加速へ、法案が閣議決定

ドイツ政府は6日の閣議で、再生可能エネルギーの普及加速に向けた一括法案を了承した。同法案はもともと炭素中立目標の実現に向けて作成されたものだが、ウクライナ戦争の勃発でロシア産化石燃料への高依存が持つリスクが露呈したことを受け、エネルギー安全保障上の意義もにわかに強まっている。法案には「再生可能エネルギーの拡大の大幅な加速は同時に、エネルギー輸入への依存を極めて迅速に低減することも可能にする」との一文が盛り込まれた。

ドイツではメルケル氏を首班とする前政権が昨年、炭素中立実現を従来の2050年から45年に前倒しするとともに、30年の二酸化炭素(CO2)中間削減目標を従来の1990年比55%から65%に引き上げる法案を作成し、議会で成立させた。現政権はこれについて1月、現状では目標を達成できないとして、炭素中立実現に向けた取り組みの強化方針を打ち出した。CO2排出削減のスピードを3倍に加速するほか、国内発電に占める再生エネの割合を30年までに現在の42%から約2倍の80%へと引き上げる方針だ。今春と今夏の2回に分けて法案を作成して年内に議会で可決させ、目標実現の道筋をつけることを計画している。

今回の閣議で了承された法案はその第1弾で、「オースターパケート(イースター一括法案)」と呼ばれている。再生エネ比率を約2倍に引き上げるために、30年の再生エネ発電量を21年の233テラワット時(TWh)から2.5倍の約600TWhへと引き上げる。化石燃料を電力に置き替える動きが進み、交通、産業、世帯の電力消費量が大幅に増えることを念頭に置いている。

30年の陸上風力発電容量は20年の54ギガワット(GW)から2倍強の115GWへと引き上げる。これを実現するため、25年以降の新設容量を年10GWとし、21年の2GWから5倍に拡大する。洋上風力発電の容量も20年の7.8GWから30GWへと引き上げる。

太陽光発電の新設容量は26年以降、年22GWとし、21年実績(5GW強)の4倍に拡大。30年の国内発電容量で215GWを実現する。

再生エネの拡大と並行して送電網の整備も進める。計19件の新設プロジェクトを進めるとともに、既存のプロジェクト17件で変更を加える。

風力発電や送電網設置プロジェクトに対しては住民や環境団体が反対運動を起こし、これが再生エネ拡大の大きなネックとなっていることから、そうしたプロジェクトを優先度の高い公共の利益と法律で位置づける。種の多様性など他の利益に優先させ、建設計画が速やかに進むようにする。

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