欧州中央銀行(ECB)は14日に開いた定例政策理事会で、前月に決めた量的金融緩和策を縮小する方針を確認した。コロナ禍前から実施してきた「資産購入プログラム(APP)」を7~9月期に打ち切る。一方、政策金利の引き上げについては、時期の明示を避けた。インフレ率が急上昇し、利上げで対応せざるを得ない状況に直面する一方で、ロシアのウクライナ侵攻がユーロ圏経済に及ぼす影響が不透明なため、利上げのタイミングが難しくなっている。
ECBは3月の理事会で、APPに基づく毎月の債券などの買い入れ額を従来の計画より縮小し、4月に400億ユーロ、5月に300億ユーロ、6月に200億ユーロとすることを決定。7~9月期以降に関しては、インフレ動向など状況に応じて検討し、中止しても問題がないと判断すれば同期に打ち切る方針を打ち出していた。
今回の理事会では、ウクライナ侵攻によってエネルギー価格が一段と高騰し、インフレ圧力がさらに強まると判断。理事会後に発表された声明に、「APPを7~9月期に終了する見通しが強まった」という文言を盛り込んだ。6月の理事会で具体的な終了時期を決める。
ユーロ圏では物価上昇が加速しており、3月のインフレ率は過去最高の前年同月比7.4%に達した。このため、早期の金融正常化に慎重だったECBも方針転換を迫られ、APP終了後に利上げに踏み切る意向を表明済みだった。今回の理事会で利上げ時期に触れるかどうかが注目されていた。
ラガルド総裁は理事会後の記者会見で、利上げがAPP終了から「1週間~数カ月後」になるとの見通しを示すにとどまり、タイミングに大きな幅を持たせた。ウクライナ侵攻が経済に及ぼす影響を読み切れないことが背景にある。それでも、物価上昇を抑えることが急務となっており、市場ではマイナス0.5%となっている中銀預金金利を9月にも引き上げるとの見方が有力だ。一部では7月の利上げも予想されている。